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院長コラム

食物アレルギー

小児科医から最新の医療情報と県内の子どもにまつわる情報をお伝えしております。
この内容は、県内子育て情報誌「ちびっこぷれす」の「午後10時、クリニックにて…〜おほしさまの先生からの子育て応援”談”!〜」に掲載されています。

新年あけましておめでとうございます。子どもの貧困や虐待・保育園待機児童問題など子どもに関わる課題は山積していますが、今年は昨年よりも少しでも子育て環境がよくなることを願うばかりです。皆さんに前向きに元気に明るく子育ていただくために、今年も最新の医療情報を皆様に提供していきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。

私事ですが、東京で生活をしている大学生の息子との連絡にLINEを利用し意思疎通を図るようになってしまいました。当初は電話で肉声を聞く方がいいと思っていましたが、大学生はLINEに慣れていて、遊びやバイトに忙しいのか電話がなかなか通じず、あきらめてLINEを利用するようになりました。やってみるとその方がすぐにやり取りでき、なかなか便利です。

さて昨秋、5年ぶりに「食物アレルギー診療ガイドライン2016」が発刊されました。今月は最新の食物アレルギーについてお話します。

ガイドライン改訂ポイント

 昨年改訂された「食物アレルギー診療ガイドライン2016」には大原則である「正しい診断に基づいた必要最小限の食物除去」をさらに積極的に推し進めて「原因食品を可能な限り摂取させるにはどうすればよいか」という方向性が示されました。まず、診断をしっかりとすることが大事です。特異的IgE抗体検査という血液検査をして陽性だけで安易に除去を続けるのはよくありません。問診で様子をしっかりと聞き、血液検査も加味しながら診断していきます。除去になった場合、以前よりも積極的に食物負荷テストをすることで、完全除去を漫然と続けるのではなく早期から少量でも食べさせていこうと提言されています。
 例えば、0歳時に卵アレルギーと診断された場合、4~5歳までずっと完全除去するのではなく、定期的に血液検査で経過を追いながら食べられそうな時期を見極めに早い時期から食物負荷テストをして除去を解除します。負荷テストの負荷量は卵なら全卵1個食べられなくても、少量(全卵1/32)程度から初め、その量が問題なければ加工品の多くは食べられ、少量の全卵が入っても問題ないため、食事の気遣いは大幅に軽減でき生活の質が大幅に改善されます。県内でも負荷テストを行なっている医療機関が増え、以前よりも負荷テストをしやすくなっています。

母親の食物除去必要なし

 妊娠中や授乳中の母親から食物アレルギー発症予防のために、自分自身の卵や牛乳などの除去が必要かよく質問されます。お子さんのために何かできないかという母の思いはよくわかります。世界各国からの多くの研究結果をまとめると、現在のところ、母親が特定の食物を除去することは効果がなく、除去をすることは母親の栄養状態に対して有害と言われています。さらにお子さんの離乳食についても開始時期を遅らせることで発症が予防できるというエビデンスもなく、離乳食開始時期は生後5~6か月でスタートし、主要アレルゲンである卵・牛乳・小麦についても少量から進めていただくことをお勧めします。

園や学校での対応

 4年前に牛乳アレルギーの小学5年女子が粉チーズ入りのチヂミを誤って食べて亡くなった件をきっかけに、園や学校での食物アレルギーの対応が厳格になっています。給食は完全除去か解除かの二者択一による提供が、調理の点からも単純化され誤食防止となり推奨されています。園では先生の近くで食べる、学校では他の生徒にもアレルギーのお子さんのことを理解してもらう等で誤食防止につながります。4月は進学や進級により環境が変化したり、慣れないことからいつにも増した確認が望まれます。また、誤食防止を強調しすぎると、別室で1人で給食を食べさせねばと考えることがありますが、そこまでする必要はないと思います。子どもにとって楽しい給食が、安全を重視しすぎることで負担になるようなことがないよう、かかりつけ医(可能であればアレルギー専門医)や学校(園)の先生と相談して下さい。食物アレルギーはアレルギーの中でも昨今進歩が進んでいる領域になっています。困っている場合は近くのアレルギー専門医(私も数少ない1人)にご相談下さい。アレルギー専門医は「日本アレルギー学会」のホームページで検索することができます。

参考文献

食物アレルギー診療ガイドライン2016 協和企画

まもなく梅雨が明け夏本番になります。7月7日は七夕。毎年うちの保育園から七夕の短冊が配られますが、今年は短冊に「長生きできますように!」と書きました。30代の頃は人生まだまだ先は長いという思いでしたが、40代に入り折り返し地点を過ぎた頃から健康を意識するようになりました。通勤は自転車です。

さて、2年前に東京・調布市の小学校でチーズなどにアレルギーがある5年生の女子児童が給食を食べた後に亡くなるという事故がありました。これをきっかけに園や学校で食物アレルギーの対応が厳格化し、アナフィラキシー時に医療機関外で使用できる「エピペン」の登場も加わりました。医療の進歩と保育・教育現場の体制の変化により、5~10年前の知識では対応ができない状況にあります。昨年7月の「エピペンの対応について」に引き続き今月は食物アレルギーについてお話します。

 

食物アレルギーとは

 食物アレルギーは乳児で5~10%、幼児で約5%、学童期以降では1.5~3%の発症頻度があり、決して珍しい病気ではありません。原因食物は卵・牛乳・小麦の順で多いです。症状はじんましんなどの皮膚症状が最も多く、咳や下痢などの症状もあります。10%でショック症状と言われるアナフィラキシーがあり、生命をおびやかすほどの重いアレルギー症状がでることがあります。

食物アレルギー診療ガイドライン2012によると、食物アレルギーとは「食物によって引き起こされる抗原特異的な免疫学的機序を介して生体にとって不利益な症状が惹起される現象」を言います。難しく書いてありますが、要するに食物を食べじんましんなどの症状がでる病気です。初めて卵を食べたら全身にじんましんがでたり、回転ずしで‘いくら’を食べたら口唇が腫れて目や耳にまで赤みが広がってきたりするというのがよくあるケースです。口のまわりが赤くなる場合、食物アレルギーかどうかと心配される場合があります。皮膚が荒れていると皮膚に付いて赤くなりやすく、食物アレルギーと間違いやすいこともありますので、自分勝手に決めつけず、きちんと診断をしてもらうことをお勧めします。

 

特異的IgE抗体検査は万能ではない

食物を食べてなく、特異的IgE抗体検査が陽性だけの理由で陽性の食品をすべて除去しているお子さんがいます。問診から原因の明らかな食物がはっきりわかる場合はその食品だけを除去することに問題ありませんが、検査で陽性になっただけで除去する必要はありません。

特異的IgE抗体検査で「陽性=除去」ではありません。この検査は感作されている(感じやすい状態)かどうかを知るものです。陽性は症状がでるかどうかをみているのではありません。

 

プロバビリティカーブって?

 特異的IgE抗体検査で値が高いほどアレルギー症状がでやすい傾向にあります。最近、診断にプロバビリティカーブを利用するようになってきました。プロバビリティカーブは食物を食べて症状がでる可能性と特異的IgE抗体価の関係が曲線として示されています。食物・年齢によって曲線が異なり、例えば、ミルクの特異的IgE抗体価が3.0 UA/mlの場合、症状がでる可能性は1歳未満で約90%、1歳で約50%、2歳以上で約30%と判断できます。このカーブを利用し診断や負荷試験の決定をしています。まだ全食品に対応はできていませんが、現在卵白・ミルク・小麦では利用できます。

 

食物負荷試験をうまく利用しよう!

食物アレルギーの診断や除去解除にプロバビリティカーブを利用しても確率でしかわかりませんので、最終的には食物負荷試験を行います。検査値が陽性だけで除去をしている場合は一度食物負荷試験を試すことをお勧めします。

食物除去は日々の生活の質を下げます。ただでさえ忙しい子育てに除去が加わると負担が増えるばかりです。ガイドラインには必要最小限の食物除去、つまり食べられる子には食べさせることが大切だと言っています。

 

予防法はありますか?

食物アレルギーにならないように予防ができないかと世界中で多くの研究が行われてきましたが、現段階で食物アレルギーを予防する方法は明らかにされていません。妊娠・授乳中の母親自身の食物制限や児の食物摂取を遅らせたりすることは発症予防につながりません。通常どおりの離乳食スケジュールで進めてください。

 

参考文献

保育所におけるアレルギー対応ガイドライン 厚生労働省

食物アレルギー診療ガイドライン2012

食物アレルギーのすべて 南山堂

梅雨明けすると夏本番ですね。山梨の夏はとても暑いので、熱中症に気をつけてお過ごしください。朝、昼にシャワーを浴びたり、水遊びを取り入れることが熱中症だけでなく、あせも(汗疹)予防にもつながります。

 先月、風疹が流行中であることから県内の多くの市町村で風疹ワクチンの助成が始まるというとてもうれしいニュースが入ってきました。多くの人に利用し接種が広まることで風疹の流行が落ち着くことを期待します。風疹にかかった場合は他人に広げないような配慮をお願いします。

 昨年12月、東京・調布市の小学校でチーズなどにアレルギーがある5年生の女子児童が給食を食べた後に亡くなるという事故がありました。食物アレルギーのお子さんや保護者をはじめ、園や学校の関係者の方々は大きな衝撃を受けたのではないかと思います。これをきっかけに私も各方面から相談を受けることが多くなってきました。今月は食物アレルギーの症状の中でも重症と言われる「アナフィラキシーショック」への対応についてお話をします。

 

アナフィラキシーショックって

 先日牛乳アレルギーのお子さんが子育てサークルで出されたピザを食べたところ、牛乳が入っていたようで体にじんましんが出て、咳がひどくなり、さらに顔色も悪くなるアナフィラキシーショックの状態になり、搬送されてきたというお子さんを診察しました。何回かアナフィラキシーショックを経験しているお子さんで、お母さんも食材には非常に気を使っていたようですが、確認した(牛乳不使用)にもかかわらず実際には混入していたようで除去の大変さを痛感しました。

一般的な食物アレルギーの症状は、じんましん・咳・下痢などがあります。複数の臓器に症状が出現する状態を「アナフィラキシー」と呼び、その中でも血圧が低下し意識レベルの低下や脱力を来すような場合を特に「アナフィラキシーショック」と言い、この場合は直ちに対応しないと生命にかかわる重篤な状態になります。

 平成13・14年の食物アレルギー全国調査(厚生労働科学研究)によるとアナフィラキシーショックの頻度は10%程度あり、決してまれなことではありません。アナフィラキシーショックが起こった場合、まず救急車を呼び医療機関に向かう体制をとり、同時並行で、処方されている方はアドレナリンの自己注射薬である「エピペン」を注射することが効果的です。30分以内にアドレナリンを投与することが患者の生死を分けると言われています。

 

エピペンをうまく利用するには

エピペンは2011年9月から保険適応となったため、急速に普及しています。体重15kg以上の方でアナフィラキシーがあった場合やそのリスクが高い場合が対象です。エピペンを使うタイミングとしては意識がなくなるようなショック症状に陥ってから使用するのではなく、その前段階である頻発する咳・ゼーゼーや呼吸困難などの症状がある段階での使用がより効果的であると言われています。必要性を判断した場合は、躊躇せずに勇気を持ってエピペンの投与を行なってください。エピペンの副作用は小児では血圧上昇や心拍数増加がありますが、軽い症状であると考えられています。調布市のケースでも見られたように、家庭だけではなく園や学校においてもエピペンの必要性が求められています。子ども・保護者・かかりつけ医のみならず、園や学校の先生方との連携も非常に大切です。

 

最近の動き

原因食品が食べられるかどうかはアレルギー検査だけでは判断に限界があり、食物負荷試験を実施しないと最終的に解除できるかわかりません。県内でも食物負荷試験を実施できる病院(山梨厚生病院・甲府共立病院・大学病院など)が増えてきました。このおかげで医療設備が整ったところで安心して負荷試験ができ、検査が陰性でなくても負荷試験で解除できるようになってきています。さらに、これまでの治療は除去主体でしたが、除去だけでは治らないお子さんに「食べて治す」という経口免疫療法という治療も始まっています。この治療はまだ研究段階であるため食物アレルギーの専門医が対応しています。

 

参考文献

保育所におけるアレルギー対応ガイドライン 厚生労働省

食物アレルギー診療ガイドライン2012

山梨県の小児科 げんきキッズクリニック 夜間診療・小児救急: 平成21年12月号(Vol.56)最新の食物アレルギーの治療

今年も残すところわずかになりました。新型インフルエンザによる学級閉鎖は今までになく多く、これから本格的なインフルエンザのシーズンに入り、今まで以上に混乱が予想されます。ご心配だと思いますが、冷静に対応してください。

10月に昭和町で開かれた「パパママ学級」で私の子育て経験についてや小児科医としてのアドバイスをしてきました。出産前のパパとママに話をすることは初めてで緊張しました。参加者に話を聞くと出産時の立会いを予定しているパパが半分程度しかいないことが少し残念でした。一生に1回しかないわが子の誕生の瞬間を夫婦で共有しない手はありません。立ち会いにはぜひ関わって、たいへんなママを支えてあげてください。ママの方で恥ずかしいなどの理由で立ち会いを拒む人もいるようですが、出産はパパの存在がたいへんありがたいものです。積極的に立ち会いをしてもらいましょう。うちの子は4人とも立ち合いましたよ。感動ものです。さて今月のテーマですが、10月末に秋田市で行われた日本アレルギー学会に参加しアレルギーの最新情報を学びましたので一部をご紹介します。

 

はじめに


アレルギーは2人に1人は診断を受けたことがある程、非常にポピュラーな病気になりました。ぜんそくは吸入ステロイドを中心とした治療法が広がり、アトピー性皮膚炎はステロイド軟膏の理解が浸透してきました。2つの病気は昔と比べコントロールが可能になってきました。一方で、食物アレルギーはぜんそくやアトピー性皮膚炎と比べると診断や治療法の難しさがあると言われています。そこで、食物アレルギーの基本と今トピックスとなっている「食べて治す経口減感作療法」についてお話します。
 
 

食物アレルギーの診断と治療

頻度が一番多いのは卵です。卵を食べて1時間以内に顔や体にブツブツがでてきた例はよくあります。食物アレルギーの頻度は乳児で10%あり、患者数は増加してきています。症状は発疹や下痢などがあり、血圧低下や意識がなくなったりするアナフィラキシーショックといった重い症状になることもあります。素人判断で必要以上に多くの食品を除去する場合もあり、医師の診断を受けることは大切です。
治療は除去が中心となります。ただ、漫然と除去をし続けることは成長期のお子さんにはつらいものがあります。食物アレルギーは多くの場合、年齢が進むにつれて食べられるようになってきますので、3~6ヶ月ごとに確認をする必要があります。確認には「特異IgE抗体」と「食物負荷試験」を組み合わせながら解除の時期を検討します。よく「特異IgE抗体」を調べますが、この結果の解釈は注意が必要です。陽性の場合、必ず除去しなければならないのではなく、参考程度となることを理解してください。最終的には医師の管理のもとで、実際食べて症状がでないかをみる「食物負荷試験」をしなければ解除の時期はわかりません。また、治療薬と考えられている「インタール」という内服薬があります。全国有数のアレルギー専門病院ではほとんど出す薬ではないので効果はないと考えてください。以上が「食物アレルギーの診療の手引き2008」(http://www.allergy.go.jp/allergy/guideline/05/02.html)にまとめてありますので参考にしていただけたら幸いです。
 
 

食べて治す~経口減感作療法~

食べて治すって本当なの?と驚いている人も多いと思います。私もこんな治療法があるんだと驚きました。食物アレルギーの患者さんの多くは、小学校入学までには原因食物を食べられるようになりますが、一部のお子さんはその時期を過ぎても避けなければなりません。小学校入学後も、少量食べてアナフィラキシーショックを起こす人もいます。そこで3年前から、一部のアレルギー専門病院で小学校入学後も食事制限されているお子さんに対して、「食べて治す、経口減感作療法」が始まりました。原因食物をある程度以上食べているとアレルギーが抑えられることがあり、この現象を経口減感作と言います。少量では症状がでるが、1年ほど毎日決められた量を食べ続けると、病気を克服することができる治療法です。この治療はまだまだ新しいものなので慎重に行っているのが現状です。また医師管理ももとに実施されている治療法です。個人では絶対に行わないでください。なお、10月17日に日本テレビ系列で放映されました。ご興味のある方は以下の動画(http://www.dai2ntv.jp/news/mesen/index.html)を参照ください。

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