令和8年4月号(Vol.251)RSウイルス感染症に対する母子免疫ワクチンについて
アメリカ・イスラエルがイランを攻撃し、ホルムズ海峡封鎖に伴いガソリン価格が上昇しています。ロシアとウクライナの戦争も終結していない中で、世界平和が程遠い事態となって心が痛みます。人間は大昔から戦いを繰り返して殺し合って苦しんできました。歴史から学び、戦争を止めることができないのでしょうか。
今月はお子さんにとって入学・入園だけでなく、クラス替え・担任が変わるなど変化を伴う時期となります。新しい生活に慣れないと、園・学校への行き渋り、腹痛・頭痛など体に症状がでる場合があります。まず、お子さんの話をよく聞き、様子を気にかけてください。子どもとの対話が大切です。もし気になれることがあれば、園・学校の先生にお伝えすることも大切です。
そして、親子とも花粉症でお困りの方も多い頃かと思います。私も花粉症ですが、体が老いてくると免疫機能も老いて低下するため、若いときにあった夜間鼻づまりで起きることはなくなってきました。年を取ることは悪くないと思えることの一つです。今までの花粉症の治療は花粉を遠ざけ、症状緩和のお薬を使用することしかありませんでしたが、2018年からスギ花粉症の舌下免疫療法の薬が誕生し、体質を改善できる治療があります。そのお薬を舌の下に1分間置くことを毎日3年間続けていくと、症状が緩和されます。特に症状がひどい方は生活に支障がでていると思いますのでぜひお勧めしたい治療です。
今月取り上げるRSウイルス感染症はインフルエンザ同様、子どもたちにとってかかるとダメージの強い感染症です。これまで子どもたちをRSウイルス感染症から守るお薬はシナジス・ベイフォータス(RSウイルスに対する抗体)という注射薬を早産などの赤ちゃん対象に接種していました。今月4月からは妊婦さんを対象にRSウイルス感染症に対する母子免疫ワクチンが定期接種化されました。全妊婦さんに注射することで、すべての赤ちゃんをRSウイルスから守れる体制が整います。今月はこの母子免疫ワクチンについてお伝えします。
RSウイルス感染症について
RSウイルスにかかると、年齢問わず、何度も感染を繰り返しますが、初めてかかると、より重症化しやすいと言われています。特に生後6か月以内に感染すると、細気管支炎や肺炎など重症化することがあります。生後1歳までに50%以上、2歳までにほぼ100%の乳幼児が少なくとも1度はかかります。潜伏期間は2~8日、接触・飛沫感染によって広がります。症状は発熱・鼻汁・咳などがあり、迅速検査により診断が可能です。治療には特効薬はなく、症状を和らげる対処療法を行います。
母子免疫ワクチンって?
乳児は免疫の機能が未熟なため、抗原に暴露しても自力で十分な量の抗体を産生することができないとされています。母子免疫ワクチンとは、妊婦の方が接種することで、母体内で作られた抗体が胎盤を通じて胎児に移行し、生まれたお子さんが出生時からRSウイルスに対する予防効果を得ることができます。つまり、妊婦さんにワクチンをすることで作られた抗体がおなかの赤ちゃんに移行し、生まれる前からRSウイルスに対する抗体をもっているため、RSウイルスにかかりづらい状態になって生まれてくるのです。
今月から始まるRSウイルス感染症に対する母子免疫ワクチンは妊娠28週0日から36週6日までの時期に行います。生後6か月以内に発症を予防する効果は約5割、重症化を予防する効果は約7割でした。妊婦さんへの安全性は主な副反応として疼痛(40.6%)、頭痛(31.0%)、筋肉痛(26.5%)などがみられます。生まれてきたお子さんに対しては重大な懸念は認められていません。
最後に、母子RSワクチンによりRSウイルス感染症にかかる赤ちゃんが重症化しづらくなることが期待されます。子どもたちから感染症を守る体制がまた1つ強化されました。しかし、おたふくかぜワクチンがまだ定期接種化されていないのが現状です。1日でも早い定期接種化を強く望みます。
参考文献
RSウイルスワクチン 厚生労働省













