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院長コラム

アレルギーを知ろう

小児科医から最新の医療情報と県内の子どもにまつわる情報をお伝えしております。
この内容は、県内子育て情報誌「ちびっこぷれす」の「午後10時、クリニックにて…〜おほしさまの先生からの子育て応援”談”!〜」に掲載されています。

ようやく暖かくなってきました。暖かい日は外で体を動かしたくなりますね。私は仕事場まで自転車で通勤をし、休みの日は家の近くの荒川でランニングをして運動不足解消をしています。

 3年前から月に1度アレルギー専門病院での研修をしながら、今年1月、アレルギー専門医の試験を受けました。先月発表があり、見事合格することができました。県内では小児科医2人目になります。これからも今まで以上にアレルギーの患者さんに最新の医療を提供していきたいと思います。

 今回、「アレルギー専門医」を取得したので、改めてアレルギー全般についてお話します。

 

アレルギーって何?

 アレルギーとは、免疫反応が特定の抗原(アレルゲン)に対して過剰に起こることを言います。アレルギーには、抗体(体が作る免疫物質)やリンパ球の2つが主に関与しています。抗体やリンパ球が正常に働いていれば問題ないのですが、このバランスがくずれると、通常は反応することのないホコリ・ダニ、スギ花粉などに過剰に反応してしまい、目のかゆみ・くしゃみ・鼻水などの症状がでます。これが、アレルギーの症状といわれているものです。

アレルギーのメカニズムがわかってきたことで、過剰に働く部分を抑えるようなお薬の開発も進んでいます。ここ数年でも続々と副作用の少ない効果のあるお薬が登場し、アレルギーの患者さんの治療薬として役立っています。

アレルギーの患者数は現在、世界的に増えています。日本では全人口の30%を超えていると言われています。原因としては遺伝的なことだけではなく、家の構造・衛生状態など環境の影響も考えられており、一つではなく複数の要因があると言われています。先進国や都市部にアレルギーが多いこともわかっています。アレルギーの主な病名としては、ぜんそく・アトピー性皮膚炎・食物アレルギー・花粉症・アレルギー性鼻炎・じんましんなどがあります。

 

「衛生仮説」ってご存知ですか?

 少し難しい話になりますが、約20年前に発表されたイギリスのStrachan博士により提唱された「衛生仮説」という学説が最近注目されています。これはアレルギーの子どもを対象にして調査をしたところ、かぜなどの感染症にかからないとアレルギーの子どもが増えるという結果が出ました。他の調査では「家畜を飼育している農家の子どもの方が環境中のエンドトキシン(=細菌が出す毒素)が多く、アレルギーになりにくい」、「ペットを飼っていた子どもは、ペットにいる病原体と接触する機会が多いため、アレルギーになりづらい」などがあります。感染しないことで免疫を刺激することができなかったり、衛生状態がよすぎることや病原体との接触が減ることが原因で、アレルギーになりやすくなるのではないか言われています。アレルギー症状が出ている方は除いて、多少不潔であることは悪いことではないかもしれません。

 

アレルギーマーチについて

 アレルギーは年齢とともに変わってくることがあります。アレルギーが行進(マーチ)しているように変わっていくので「アレルギーマーチ」と呼ばれています。よくあるパターンとして、乳幼児期にアトピー性皮膚炎を患い、皮膚の症状が落ち着き始めた頃、ぜんそくが発症、学童期にアレルギー性鼻炎になったりします。中には症状がよくなってしまうこともあり、人によって病気の出方は様々ですが、病気が変わってくることが子どもにはよくあります。

アレルギーって、漠然としていてわかりにくい分野だと思います。私も最初勉強し始めた時、わかりづらいと感じていました。インフルエンザの場合の診断は検査キットを使うことで簡単に診断がつきますが、アレルギーの場合、検査だけで診断がつくところまでいきません。検査が陽性だとアレルギーの体質があるということまでしかわかりません。アレルギーの診断は症状や経過・父母のアレルギーの有無を検査結果と合わせて総合的に判断するため、特に境界域の場合などわかりづらさがあるかもしれません。

 

参考文献

臨床アレルギー学(南江堂)

松本健治 衛生仮説とアレルギー疾患の発症 アレルギー2010;59:815-21.

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