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院長コラム

インフルエンザ

小児科医から最新の医療情報と県内の子どもにまつわる情報をお伝えしております。
この内容は、県内子育て情報誌「ちびっこぷれす」の「午後10時、クリニックにて…〜おほしさまの先生からの子育て応援”談”!〜」に掲載されています。

 

 明けましておめでとうございます。今年も5人目の子育て奮闘中のパパとして県内の小児医療について情報提供しますので、どうぞよろしくお願いします。先月初め、娘(小1)がサンタさんへクリスマスプレゼントのリクエストの手紙を書いていました。「かわいいすいとう、できたらふでばことえんぴつをおねがいします。まいとし、すきなものをくれてありがとうございます。サンタサンげんきでいてください」と書いてありました。またうちの家宝が増えました。今月は新しい話題がありましたので、インフルエンザの最新情報をお伝えします。

 

インフルエンザ流行中!

毎年流行するインフルエンザ、子どもだけではなく大人もかかり、時には家族全員かかってしまうこともあり、猛威を振っています。予防の基本は手洗い・うがい、ワクチン接種です。この時期に熱が出た場合はインフルエンザを疑う必要があります。元気で熱も高くないのに、検査するとインフルエンザという方がいて、かぜのような症状でも疑う必要があります。自己判断で園や学校へ行ってしまい、感染を広げてしまうこともあります。自分の子どもだけでなく、クラスのお子さんに感染が広がらないような配慮もお願いします。

 

インフルエンザワクチン効果あり!

昨秋、国立感染症研究所から6歳未満のお子さんが対象でインフルエンザワクチンの有効性について報告がありました。2013年から2018年までに症例・対照研究(test-negative design)という手法で調査しました。その結果は有効率が41~63%、インフルエンザワクチンの有効性が示されました。私自身の経験でもワクチン接種していただいた方の方がかかっても軽い印象がありますし、うちのクリニックに隣接しているげんき夢こども園は園児が毎年ほほ100%インフルエンザワクチンを接種しているため、例年インフルエンザにかかってしまう園児さんがいても感染拡大がほとんどありません。インフルエンザワクチンの接種はお勧めです。

 

ゾフルーザ、学会が推奨せず!

昨シーズンから抗インフルエンザ薬の新薬として登場した「ゾフルーザ」は1回だけ内服して終了するため、飲みやすく普及しました。ただ、今シーズンの治療方針として、日本小児科学会は12歳未満のお子さんについての使用経験がまだ少なく、十分なデーターの集積がないことと耐性ウイルスが出現したことから、積極的な投与を推奨しないというコメントを発表しました。日本感染症学会でも同様のコメントが出ていますので、ゾフルーザではなく、タミフルの服用をしてください。

今シーズンの治療薬をどうする?

抗インフルエンザ薬は現在5種類、1種類が点滴薬のため入院治療で行うことが多く、外来で使用できるのは4種類(内服薬・吸入薬ともそれぞれ2種類)です。吸入薬は中学生以上であれば大抵問題なくできますが、小学生の場合、吸入薬に慣れていないため「イナビル」はお勧めできません。「イナビル」は1回のみの吸入薬のためにうまく吸えないと効果が期待できないからです。そのため「リレンザ」の薬の方が1日2回5日間(計10回)吸入するため、1回失敗しても大きな問題がないので安全です。ただ、吸入薬は息を止めることが必要なので、難しいようなら内服薬がお勧めです。内服薬は先ほど述べたように「ゾフルーザ」ではなく、「タミフル」を使用してください。

異常行動にも注意を!

先月、広島市内の高層マンションから男子中学生がインフルエンザにかかって転落死したことが報道されました。インフルエンザにかかると、年齢・性別・抗インフルエンザ薬の服薬を問わず、急に走り出す・飛び降りるといった異常行動が起こることがあります。発熱から2日以内に起こりやすいので、お子さんを1人にせず見守りを徹底しましょう。玄関や窓のカギを閉めて、ベランダ側で寝かせない・1階で寝かせるなどの対策も有効です。6年生までのお子さんであれば、必要に応じて病児保育を利用してください。

参考文献

国立感染症研究所 IASR Vol. 40 p194-195:2019年11月号

「2019/2020シーズンのインフルエンザ治療方針」(日本小児科学会)www.jpeds.or.jp/uploads/files/2019-2020_influenza_all.pdf

 

 待ちに待った春がもうすぐやってきますね。最近、うちの娘(6歳)がNHKの「チコちゃんに叱られる!」というバラエティー番組を楽しみに観ています。5歳のチコちゃんが素朴な質問をして、知らないでいるとチコちゃんに「ボーッと生きてんじゃねーよ!」と叱られます。このフレーズがとても楽しいようで、いろんな場面で私たちに言って、家庭を明るくしてくれます。

今月は例年に比べて大流行したインフルエンザについて皆さんにお伝えします。

 

インフルエンザ流行中に気をつけたいこと

 インフルエンザ流行中は、熱が出たときにインフルエンザかどうか疑う必要があります。抗インフルエンザ薬は発症して48時間以内に使用しないと効果がないため、早めに診察を受けることをお勧めします。抗インフルエンザ薬は有熱期間の短縮・重症化予防効果が認められています。

診断は迅速キットで判断することが主ですが、迅速キットは発熱早期だと陰性になる場合があります。発熱後12時間経つと信頼性が高くなりますので発熱してしばらく経ってからの受診をお勧めします。夜、熱が出たと救急外来へ急がず、翌日かかりつけ医への受診が得策です。また、家族内でインフルエンザと診断された人がいた場合は濃厚接触と判断し、迅速キットをせず、インフルエンザと診断し抗インフルエンザ薬を処方する場合もあります。

予防の基本は手洗い・うがい・マスクの使用ですが、一番はインフルエンザワクチンを接種することです。インフルエンザワクチンの効果として発症予防・学校の欠席日数や入院日数を減らした報告があります。

 

夜、熱が出て翌朝、下がっても

 インフルエンザ流行期に夜間熱がでた場合は、翌日医療機関に受診し、インフルエンザかどうかを確認してください。よくあるケースが、夜、熱が出たものの翌朝には熱がないために、園・学校へ行き、昼頃、熱で呼び出されるというものです。医療機関でインフルエンザと判明した時には、午前中の登園・登校により周囲にインフルエンザをばらまいて、友達を感染させてしまっています。このようなきっかけで流行して、学級閉鎖や学年閉鎖に至ることが多々あります。皆さんに理解してもらい、一人でも感染者が減り、流行が阻止できればありがたいです。

 

新薬「ゾフルーザ」について

 今シーズンから抗インフルエンザ薬の新薬として登場したのが「ゾフルーザ」です。1回のみの服用であるため、飲みやすいことが評価されています。この薬は新しい作用機序でインフルエンザウイルスの増殖を抑制します。ただ、小児科学会では「新薬のため十分なデーターを持たないため、使用に関して検討中である」と推奨していません。耐性ウイルスの問題もあるようなので、安易に使用するのは控えた方がいいと思っています。うちのクリニックでは今までの薬を第1選択薬として、やむを得ない場合、つまり、タミフルの服用が難しい場合に限ってゾフルーザを服用しています。

 

隠れインフルエンザって?

 最近、「隠れインフルエンザ」という言葉を耳にするようになりました。これは医学用語ではなく、おそらくメディアが言っているものではないかと思います。新しく病名ができたのではなく、迅速キットが普及したおかげで、微熱・咳・鼻水などの症状でも陽性者が出て、インフルエンザという診断されるようになったということです。通常のインフルエンザは、高熱が出てぐったりしてきますが、隠れインフルエンザは症状の軽いインフルエンザと考えてください。私自身の経験でも、微熱・咳・鼻水と風邪と思われる症状でも迅速キットで陽性と判明する場合があります。こういったケースも考えると、園・学校に行っているお子さんは軽い症状であっても風邪だと自己判断せず、医療機関に受診をしていただくことをお勧めします。

 

治癒証明について一言

 今まではインフルエンザにかかると、「医師による治癒証明書」が必要でしたが、最近は必要としない園・学校が増えてきました。医師による治癒証明書を必要としないところは保護者が記載しています。うちのクリニックは通常、発症時とよくなった時点で2度来院し、よくなった時点に治癒証明書を記載して保護者も特に負担を感じていないのではと思っています。上記にも挙げましたが、治癒証明の有無の議論より、前夜、熱を出しているにも関わらず、園・学校に来てしまい、感染拡大をさせてしまっている現状を重く受け止めるべきではないでしょうか?集団生活を送る上でのモラルという点に関して大変危惧しています。

 

参考文献

「2018/2019 シーズンのインフルエンザ治療方針」について(日本小児科学会)

http://www.jpeds.or.jp/modules/news/index.php?content_id=402

アメリカ大統領選挙ではトランプ氏が勝ちました。予想に反しての勝利でとても驚きました。こんなに盛り上がる選挙だと自然と政治に関心を持ちますね。イギリスではEU離脱への国民投票で熱狂的な様子がみられました。諸外国における政治への関心の高さを伺い知ることができました。日本においてもいろいろな問題が多くありますが、何か盛り上がりに欠ける気がします。先月、県内の首長として初めて女性の北杜市市長が誕生しました。これからもっともっと女性が活躍していただくことを期待しています。今月は毎年必ず流行するインフルエンザの最新情報について皆さんにお伝えします。

 

インフルエンザ対策について

県内ではすでに学級閉鎖の学校もでており、例年より早い流行が予想されています。7年前に新型インフルエンザの発生があり、その際国中が対応に追われました。ここ数年のインフルエンザウイルスのタイプはA型がA(H1N1)pdm09亜型とA(H3N2)亜型の2種類、B型が山形系統とビクトリア系統の2種類が検出されています。今シーズンも同タイプのインフルエンザウイルスの流行が予想されるため、ワクチンも同じ4種類が入っています。

予防はワクチン接種が基本で手洗い・うがいの励行が大切です。咳や鼻水がでる場合は他の方にうつさないためにもマスクを着用してください。咳・鼻水・熱などの疑われる症状があった場合、無理して園・学校・職場に行くと感染を広げることにつながります。自分だけではないことを配慮していただけるとうれしいです。

現在、抗インフルエンザ薬は飲む・吸う・点滴の3タイプがあります。通常は飲むタイプの「タミフル(10歳代は禁忌)」、吸うタイプの「リレンザ・イナビル」で、服薬により熱や症状の期間を短縮すると言われており、発症48時間以内に薬を使用すると効果が期待できます。

 

迅速検査の限界を知る

インフルエンザが疑われる場合は迅速検査をします。迅速検査は熱が出て時間が経たないとウイルス量が少なく陽性となりづらいため、熱がでて12時間以上たってからの検査が信頼できます。熱の早期では検査せず、抗インフルエンザ薬を使う場合もあります。また熱がでて12時間以上経っていても検査が陰性でも家族中でかかっていたり、症状からインフルエンザと判断される場合は抗インフルエンザ薬を内服して構いません。迅速検査は万能ではなく、早期に検査をしたり、微熱であったり、採取が上手にできなかったり、B型の方が陰性になりやすかったりすることがあります。検査に限界があることを知ってください。受診は信頼関係もあるかかりつけ医に診てもらうことがその後の対応も含めてお勧めです。

 

ワクチンって効くの?

他のワクチンに比べて、インフルエンザワクチンの効果が弱いのは、インフルエンザワクチンが突然変異を起こし、抗原性が毎年少しずつ変化するからです。前年の流行ウイルスからワクチンを作製するのですが変異が起きると効果が低下します。

昨年8月、慶応大学小児科から患者数8,479名の大規模な調査結果が発表されました。2013-14シーズンではワクチンの有効率がA型63%、B型26%、全体45%、2014-15シーズンでワクチンの有効率がA型37%、B型47%、全体38%という結果で4割程度の効果が期待できます。ただし、1歳未満の乳児では2013-14シーズンで21%、2014-15シーズンで3%と低率でありました。

菅谷らの別の調査結果では、日本で行われた1960年代から1994年まで学童集団接種とその後の集団接種中止となった時代との死亡者の比較し、集団接種中止以降、インフルエンザ死亡者が増加、多くが高齢者であったことから、学童集団接種により高齢者の死亡が抑えられていたこと、さらに幼児の死亡・学級閉鎖も抑えられていたことがわかりました。ワクチン接種は自分だけを守るだけではなく、その家族や周囲の人々、さらには社会のハイリスク群も守るという集団免疫の効果が再認識されました。

うちの保育園では職員は全員接種しており、園児さんのご両親の協力もあり、インフルエンザワクチンをすべての園児に接種しているおかげで集団免疫の効果が得られています。昨年は100人中、10人程度しか罹らず、集団免疫の効果を肌で感じています。インフルエンザワクチンの効果は100%ではありませんが、少なからず効果が期待でき、特に低年齢児においては接種をお勧めしたいと考えています。

 

参考文献

インフルエンザ診療ガイド2016-17 菅谷憲夫 日本維持新報社
厚生労働省ホームページ


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