

小児科医から最新の医療情報と県内の子どもにまつわる情報をお伝えしております。
この内容は、県内子育て情報誌「ちびっこぷれす」の「午後10時、クリニックにて…〜おほしさまの先生からの子育て応援”談”!〜」に掲載されています。



小児科医から最新の医療情報と県内の子どもにまつわる情報をお伝えしております。
この内容は、県内子育て情報誌「ちびっこぷれす」の「午後10時、クリニックにて…〜おほしさまの先生からの子育て応援”談”!〜」に掲載されています。
いよいよ夏、到来!水分補給を気にしながら夏を楽しみましょう。最近、成人した子どもたちの影響で、ChatGPTの使い方を教わり、AIデビューしました。ChatGPTは、優しいコメントや提案をしてくれることを知りました。とは言え、この原稿は毎月頭を悩ませながら取り組んでいます。AIを活用しながらも、AIが書けない自分の体験を盛り込みながら、これからも取り組んでいきたいです。
前回、HPVワクチンについてお勧めしました。初回接種が15歳未満だと2回、15歳以上だと3回接種します。対象時期は小6からでき、中学生になると部活に勉強に忙しくなるので、夏休みを利用して接種をお勧めします。2回目は1回目接種から6か月あけてください。
先月初旬、山梨県障害児(者)地域療育等支援事業で「発達や行動が気になる子の理解を学ぶ」について100名を超える県内の保育士・保健師・教師を対象に講演会をさせていただきました。質疑応答では保育園・学童・児童発達支援センター・学校などの現場で様々な困り感があることを知りました。今月はこの講演会でお話したことを基に「発達が気になるお子さんの対応法」についてお伝えします。
発達障害は脳機能の発達に関係する障害です。臨機応変な対人関係が苦手、こだわりが強いといった自閉スペクトラム症(ASD)、不注意・多動性・衝動性のある注意欠如・多動症(ADHD)、読み・書き・計算が苦手な学習障害(LD)などに分けられます。これらの発達の特性が重複したり、強弱がみられたりします。その行動や態度は「自分勝手」とか「変わった人」「困った人」と誤解され、敬遠されることも少なくありません。原因は親のしつけや教育の問題ではありません。
周りから見てアンバランスな様子が理解されず、定型発達の(年齢に応じた身体的・知的・社会的・情緒的な発達が順調に進んでいる状態)お子さんと対応を同じ、もしくは近づくように対応していくことは発達障害の子どもたちに負担感を強いることにつながります。
大前提として理解すべきことは「発達の特性は残り続ける」ということです。「特性がなくなる」ように親も含めた大人が目標設定することはその子どもたちに負担感がかかります。苦手な領域の訓練に比重をかけすぎないでほしいです。
こだわりが強い子どもの場合、食事へのこだわりから白いご飯しか食べないことがあります。対応としては、白いご飯を中心に食べてもらい、本人の様子をみながら、他の食物を探すのもいいかもしれません。栄養のことを気にしすぎて泣きながら食べさせるような対応をすることは避けましょう。皆で合唱をするときに、耳を塞いでしまう大きな音に敏感な子どもがいた場合は、「合唱が嫌い・怠けている」という考えではなく、特性の程度に応じて、見学・イヤーマフの使用・歌う場所を集団の後ろ側にするなどの工夫で対応することも大切です。
ADHDは幼少期の多動性・衝動性が大人になり減るも、不注意が残ると言われています。不注意の症状は忘れ物や紛失が多い・約束を忘れてしまうなどです。大人になりやっとADHDと診断される場合もあります。学生時代は決められた時間割、親や先生のサポートのおかげで、多少のつまずきがあっても過ごすことができる場合もありますが、働き始めると、責任が増え、同時に複数のことを処理する場面も増え、元来の特性と職場環境のミスマッチが生じ、困りごとが目立つようになります。このような場合は、職場環境を変えたり、メモや予定表、リマインダー・タイマー・アラームなどのツールを活用し、周囲の協力も得ながらこなしていくことも大切です。
幼少期に園や健診の場面で、「お子さんの発達が気になる」と言われたときは、多くの親はショックを受けます。園の保育士・健診の保健師は親にこのことを伝えるときは、お子さんために、大変気を遣いながら、勇気を出して伝えています。親はすぐに受け入れることはできないかもしれませんが、両親でしっかりと将来ある子どものことを受け止めて、関係者と一緒にお子さんの育ちに関わっていくことが大切です。親の受け止めがしっかりとしていると、お子さんに不必要な注意・非難・叱責が減り、自信をなくしたり、孤立を防ぐことができます。親の受け止め次第で、お子さんの環境は大きく変化します。
当クリニックでも発達障害の子どもを診療していますが、親の受容がしっかりし、かつ早めに環境を整えていただくと、子どもが生活しやすくなっていくのを実感しています。
発達障害情報・支援センター
発達障害って、なんだろう?政府広報オンライン
https://www.gov-online.go.jp/article/201104/entry-10347.html
自閉症スペクトラム SB新書 本田秀夫著
皆さまはG・Wどのように過ごしましたか?我が家は久々に一日だけですが家族7人全員で過ごすことができました。河原で野球をした後、兄弟で短距離走をすると言ったので、私も調子に乗って参加しました。10数年前、中学生だった子どもと短距離走をしたところ、走っている途中で足がつって肉離れを起こしたことを思い出して気をつけて走りましたが、再び足がつってしまいました。年を重ねても懲りない私です。
国立健康危機管理研究機構によると、5/8現在、全国のはしか感染者数は462人と昨年の4倍の勢いで増えています。山梨県では4月に3人かかりましたが、その後新たな発生報告はありません。私たちができることは、定期接種の対象である1歳児と年長さんは早めにワクチンを接種すること、さらに未接種または接種歴がわからない大人の方は麻しんのワクチン接種をしてください。
4月「ワクチンJAPAN(エムスリー株式会社)」というサイトが昨年7月開設されました。このサイトではHPV(子宮頚がん)ワクチンの接種状況を月次および都道府県別のデータが載せてあります。都道府県別のデータで山梨県の接種率がなんとワースト2ではありませんか!その事実を知り、大変衝撃を覚えました。他人ごとではない、なんとかしなければいけないと情報収集をし、行政担当者・学校関係者・医療従事者が一丸となって、対象者とその保護者に現状を伝える必要が早急にあるのではないかと痛感しています。
今月はHPVワクチンの現状をお伝えします。
ヒトパピローマウイルス(HPV)は、性的接触のある女性であれば50%以上が生涯で一度は感染するとされている一般的なウイルスです。子宮頸がんをはじめ、肛門がん・膣がんなどのがんや、尖圭コンジローマ等、多くの病気の発生に関わっています。特に、近年若い女性の子宮頸がん罹患が増えています。
子宮頸がんは国内で毎年約1.1万人かかり、約3,000人が亡くなっています。他のがんと比較して、若い年齢層で発症する割合が比較的高いがんです。HPVの感染を予防できるのがHPVワクチンです。HPVワクチンの接種だけで、子宮頸がんの発症を完全に防げるわけではありません。20歳を過ぎたら、2年に1度の子宮頸がん検診を受けましょう。9価のHPVワクチンは子宮頸がんを80~90%予防できます。小学6年生~高校1年生の女子が公費(原則自己負担なし、実費では1回3万円となります)で接種することができます。
HPVワクチン接種後には、多くの方に、接種部位の痛みや腫れ・赤みなどが起こることがあります。また、まれですが、重い症状(重いアレルギー症状、神経系の症状)が起こることがあります。
接種後に症状が出た場合は、まず接種を受けた医師に相談をしてください。より専門的な診療が必要な場合は協力医療機関として山梨大学医学部附属病院(産婦人科:055-273-9871)が対応していますのでご相談ください。
ワクチンJAPANによると、全国のHPVワクチン接種率は55.8%(2024年度)、都道府県別の接種率では山梨県が42%(2025年度)とワースト2でした。山形県が74%(第1位)、30%以上の開きがあり、隣県の長野県は57%(17位)です。山梨県において接種率が低いことは私も含めた医療・行政・学校関係者のアピール不足ではないかと思い、反省をしています。
全国的に接種率の高い自治体の取り組みとして、4月に富山県議会議員で産婦人科医の種部恭子先生の講演会を聞く機会がありました。その中で「学校で性教育の話の中にHPVワクチン接種がとても大切であることを学生に伝える」「保護者にもPTAを通じて保護者説明会などで話す機会を設ける」「性教育の場で男子にHPVワクチン接種によりイボ(尖圭コンジローマ)を予防できることを伝えている」などを知り、富山県の接種率が63%(全国7位)と高い理由を理解することができました。
もう一つ、宮崎県(接種率62%、全国10位)の取り組みでは、接種実施率が高い市町村ほど、個別通知・学校との連携・広報を実施しています。接種動機をアンケート調査した結果からは、「市町村からの通知」「医療機関・保護者の勧め」「友人の接種」「学校での講演会」が有用であることがわかっています。
これまで以上に、HPVワクチンの大切さを子どもたちとその保護者に伝えることは行政・学校・医療機関の責務ではないかと強く感じています。
まずはできるところから一緒に動き始めませんか?
HPVワクチン 厚生労働省
https://www.mhlw.go.jp/bunya/kenkou/kekkaku-kansenshou28/index.html
子宮頸がんとHPVワクチンについて 山梨県
https://www.pref.yamanashi.jp/kenko-zsn/kansensyou/hpv-vaccine.html
ワクチンJAPAN
宮崎県庁における 子宮頸がん予防(HPV)ワクチン普及啓発に 係る取組とその効果の検証https://www.msuisin.jp/report/02_%E6%B3%89%E6%91%A9%E4%BE%9D%EF%BC%88%E9%83%BD%E5%9F%8E%E4%BF%9D%E5%81%A5%E6%89%80%EF%BC%89_1.pdf
桜も散り、新緑溢れる季節となりました。気持ちも前向きになりますね。
一方で、京都小6遺体遺棄事件については大変残念な気持ちになりました。 将来ある子どもを親が殺めることはどんな理由があろうとも決して許されることではありません。複雑な家庭環境にある子どもたちに寄り添う必要性を痛感しました。3月に、妻と一緒に都内の映画館で「女性の休日」を観てきました。この映画は1975年10月24日、アイスランド全女性の90%が仕事も家事も一斉に「休んだ」歴史的ムーブメントを振り返った、知られざる運命の1日のドキュメンタリーです。国は機能不全となり、女性がいないと社会がまわらないことが証明されました。その後も1985年・2005年・2010年・2016年・2018年・2023年の10月24日に実施。今、アイスランドは最もジェンダー平等が進んだ国となっています。世界経済フォーラムでは2025年、ジェンダーギャップ指数ではアイスランドが148か国中1位、日本は118位(G7中最下位)でした。しかし、日本では昨年度初の女性首相が誕生しました。少しずつギャップが埋まってくることを望みます。
今月は「5歳児健診」についてお話します。5歳児健診は以前から県内でも一部の市町村で実施されていましたが、ここ最近、こども家庭庁からの後押しもあり、多くの市町村で今年から開始したり、まだ実施しない市町村も近いうちに始まると思われます。
5歳児健診とはこども家庭庁からの通知で「幼児期において幼児の言語の理解能力や社会性が高まり、発達障害が認知される時期であり、保健、医療、福祉による対応の有無が、その後の成長・発達に影響を及ぼす時期である5歳児に健康診査を行い、子どもの特性を早期に発見し、特性に合わせた適切な支援を行うとともに、生活習慣、その他育児に関する指導を行い、幼児の健康の保持及び増進を図ること」と明記されています。
5歳児健診では、今までの健診と同じように成長や発達、生活リズムをチェックします。具体的には、身長と体重を確認し、身体が健康かどうかを調べ、目や耳の具合についてもお聞きします。そして発達については、同年代のこどもと協力しあったり、ルール遊びができたり、自分の気持ちを伝えたり、相手の気持ちをくみとったりすることができるかを確認しています。多くの場合、事前にご家庭に問診票が郵送され、ご家族にチェックしてもらいます。食事、運動、睡眠、メディアの利用など、毎日の生活の状況についても確認します。気になるくせ、きょうだいのことなど、日ごろの心配事や困りごとについての子育て相談もできます。小学校に安心して、通学するために順調に成長・発達しているか、何か心配なことや困っていることがないかを健診会場で保健師や医師と一緒に確認します。
5歳児健診では発達障害かどうかを診断することはありません。お子さんの困り感やご家族の心配事などについて一緒に考えて、どうするかを相談する場所です。もし、日々の生活の中で、お子さんが困っていたり、ご家族が気になっていることがあれば、5歳児健診の機会に、保健師・医師にご相談ください。5歳児健診を実施した自治体では、不登校となったお子さんが少なかったという調査1)もあります。5歳児健診導入することで親子の困り感が減る一方で、学校側は対応法が早い段階でわかり、お子さんがスムーズに学校生活ができているのでしょう。
こども家庭庁では、「5歳児健診ポータル」というサイトを立ち上げています。そのサイトの「保護者の方」の中に、保護者向けにわかりやすい言葉で内容が述べられています。「みんなでいこう!ごさいじけんしん」では、お子さん向けにweb絵本があり、こどもと一緒に楽しめるサイトもあります。お子さんに事前に説明することで安心を得ることができます。
家庭ではごく普通に話すのに、幼稚園・保育園や学校などで話をしたりすることができない状態を「場面緘黙」といい、5歳児健診の中で確認する項目の一つに挙げられています。お子さんが保健師や医師にうまく答えることができない場合は、「場面緘黙」の可能性があります。不安が強いお子さんに現れます。安心させる環境づくりを園・学校に配慮してもらえると少しずつ話ができるようになります。
5歳児健診は多くの市町村で初めての健診で、お子さん・親・保健師・心理士・教師などの教育関係者・医師など多くの方が関わります。受ける側も提供する側も慣れておりませんので、両者で将来あるお子さんのために協働して構築していく必要があります。
5歳児健診マニュアル こども家庭庁
5歳児健診ポータル こども家庭庁
1) Korematsu S, Takano T, Izumi T. Pre-school development and behavior screeningwith a consecutive support programs for 5-year-olds reduces the rate of school refusal. Brain Dev. 2016;38:373-6.
アメリカ・イスラエルがイランを攻撃し、ホルムズ海峡封鎖に伴いガソリン価格が上昇しています。ロシアとウクライナの戦争も終結していない中で、世界平和が程遠い事態となって心が痛みます。人間は大昔から戦いを繰り返して殺し合って苦しんできました。歴史から学び、戦争を止めることができないのでしょうか。
今月はお子さんにとって入学・入園だけでなく、クラス替え・担任が変わるなど変化を伴う時期となります。新しい生活に慣れないと、園・学校への行き渋り、腹痛・頭痛など体に症状がでる場合があります。まず、お子さんの話をよく聞き、様子を気にかけてください。子どもとの対話が大切です。もし気になれることがあれば、園・学校の先生にお伝えすることも大切です。
そして、親子とも花粉症でお困りの方も多い頃かと思います。私も花粉症ですが、体が老いてくると免疫機能も老いて低下するため、若いときにあった夜間鼻づまりで起きることはなくなってきました。年を取ることは悪くないと思えることの一つです。今までの花粉症の治療は花粉を遠ざけ、症状緩和のお薬を使用することしかありませんでしたが、2018年からスギ花粉症の舌下免疫療法の薬が誕生し、体質を改善できる治療があります。そのお薬を舌の下に1分間置くことを毎日3年間続けていくと、症状が緩和されます。特に症状がひどい方は生活に支障がでていると思いますのでぜひお勧めしたい治療です。
今月取り上げるRSウイルス感染症はインフルエンザ同様、子どもたちにとってかかるとダメージの強い感染症です。これまで子どもたちをRSウイルス感染症から守るお薬はシナジス・ベイフォータス(RSウイルスに対する抗体)という注射薬を早産などの赤ちゃん対象に接種していました。今月4月からは妊婦さんを対象にRSウイルス感染症に対する母子免疫ワクチンが定期接種化されました。全妊婦さんに注射することで、すべての赤ちゃんをRSウイルスから守れる体制が整います。今月はこの母子免疫ワクチンについてお伝えします。
RSウイルスにかかると、年齢問わず、何度も感染を繰り返しますが、初めてかかると、より重症化しやすいと言われています。特に生後6か月以内に感染すると、細気管支炎や肺炎など重症化することがあります。生後1歳までに50%以上、2歳までにほぼ100%の乳幼児が少なくとも1度はかかります。潜伏期間は2~8日、接触・飛沫感染によって広がります。症状は発熱・鼻汁・咳などがあり、迅速検査により診断が可能です。治療には特効薬はなく、症状を和らげる対処療法を行います。
乳児は免疫の機能が未熟なため、抗原に暴露しても自力で十分な量の抗体を産生することができないとされています。母子免疫ワクチンとは、妊婦の方が接種することで、母体内で作られた抗体が胎盤を通じて胎児に移行し、生まれたお子さんが出生時からRSウイルスに対する予防効果を得ることができます。つまり、妊婦さんにワクチンをすることで作られた抗体がおなかの赤ちゃんに移行し、生まれる前からRSウイルスに対する抗体をもっているため、RSウイルスにかかりづらい状態になって生まれてくるのです。
今月から始まるRSウイルス感染症に対する母子免疫ワクチンは妊娠28週0日から36週6日までの時期に行います。生後6か月以内に発症を予防する効果は約5割、重症化を予防する効果は約7割でした。妊婦さんへの安全性は主な副反応として疼痛(40.6%)、頭痛(31.0%)、筋肉痛(26.5%)などがみられます。生まれてきたお子さんに対しては重大な懸念は認められていません。
最後に、母子RSワクチンによりRSウイルス感染症にかかる赤ちゃんが重症化しづらくなることが期待されます。子どもたちから感染症を守る体制がまた1つ強化されました。しかし、おたふくかぜワクチンがまだ定期接種化されていないのが現状です。1日でも早い定期接種化を強く望みます。
RSウイルスワクチン 厚生労働省
ようやく春がやってきますね。
私は健康維持にマラソンをしています。昨秋から2~3km走ると膝が痛くなる状況が続き、ネットで調べると靭帯の炎症が疑われたので、筋力を鍛え、ウォーミングアップ等の対処法をしっかりとしたところ、膝の痛みがなくなってきました。老い始めている体を労わりながら、無理せず健康維持に取り組んでいきたいと思います。
先月は子どもの性被害についてお伝えしました。ここ1か月間の報道だけでも、「学童クラブの支援員だった保育士の男が泊まり保育で就寝中の男子児童にわいせつな行為をした疑いで逮捕」「埼玉県の公立高校内で男子生徒の着替えを盗撮したとして同校教諭を逮捕」という記事がありました。被害対象が女の子だけではないことがわかります。今月も子どもの性被害についてお伝えします。
小児性愛障害は精神疾患の病名です。アメリカ精神医学会による『精神疾患の診断・統計マニュアル(DSM-5)』では診断基準として、「思春期前の小児を対象とする性的興奮をもたらす反復的な強い空想、衝動、または行動が6か月以上にわたり認められる」「本人が衝動を行動化しているか、その衝動および空想によって著しい苦痛または機能障害が生じている・そのような衝動または行動に関わる苦痛の経験は診断の要件とされていない」「本人が16歳以上でかつ空想または行動の対象である小児より5歳以上年長である」と記されています。大半は男性、フィンランドやドイツで行われた大規模調査では有病率1%でした。
2011年、熊本市で当時3歳の女児が家族と一緒に買い物に来た女児を障碍者用トイレに連れ込んだ後、女児に対してわいせつ行為を行い、口を塞いだ状態で首を絞めて殺害した痛ましい事件がありました。この事件では父親が女児1人でトイレに行かせて、犯人が後をついて犯行に至りました。250人もの加害者と対面してきた斎藤章佳さんによると、外見は「特徴がない」のが特徴だそうです。どこにでも存在し、子どもに近づいてもあやしまれにくい人物像です。アメリカの児童保護サービス機関の全国データによると、小児被害のうち81%が子どもと加害者が1対1になったときに起きていたそうです。子どもがひとりきりになるチャンスをうかがっていることがわかります。1対1にならなければ起きづらいとも言えます。
外見では見分けられない小児加害者を行動で見分ける必要があります。加害者に共通する特徴的な行動として、入念な下調べのもと子どもに接触し、子どもに接する職業や役割に就いてきます。グルーミングとは性加害を目的に親切を装って子どもに近づき、信頼や依存を高めて油断させていくことです。子どもは心身が発達段階にあり、人間関係の経験値も少なく判断能力が充分に身についていないので、優しくしてくれたり、お菓子をくれたりする大人に近づいていきます。徐々に接近し、肩や太ももなど一見無害な場所へのタッチからはじめて、次第にあからさまな場所を触ってきます。また、SNSやゲームなどのオンラインを通して、相談相手になったり、リアルに会うことを求めたり、下着姿や裸の写真を撮って送るように要求したりします。グルーミングの恐ろしい所は、被害を被害と思えず、発覚しときに子どもが加害者のことを「悪く言わないで!」と言い、「加害者に迷惑がかかるから」と口をつぐみ加害者をかばうことです。
子どもたちは未熟なので、親・園・学校だけでなく、社会全体で子どもの性暴力を守っていく必要があります。対象は男児、女児関係なく、年齢も乳児から加害されます。診察中に医師と子どもだけの1対1の空間をつくらない・学習塾などでは保護者同伴でなければ面談をしない・面談をするときには必ず講師やスタッフをもう1名同席させるなどで密室を防ぐことも大切です。
子どもたちへの性教育は小児性暴力の予防につながります。日本の性教育は世界水準を大きく下回っており、世界標準の「包括的性教育」を導入していくことが望ましいと言われています。山梨県内では、県医師会の「性(生)教育講師派遣」事業で産婦人科医らが講師となって、小中高校生に講演を行っています。子どもたちに正しい知識が普及することを願っています。
さらに、加害者が再犯させないための認知行動療法などの治療プログラムを導入することも必要です。また、子どもと接する職場(学校・保育所など)で働く人の性犯罪歴の有無を雇用主がチェックし、犯罪があれば就労を制限する「日本版DBS」が導入される予定になっています。少しずつではありますが、子どもたちを性犯罪から守る環境が整えつつあります。未来ある子どもたちを守るために、一層の医療・教育・法的整備を含めた社会全体の取り組みが求められていると感じています。
今西洋介 小児科医「ふらいと先生」が教える みんなで守る子ども性被害 集英社 2024年