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院長コラム

心身症

小児科医から最新の医療情報と県内の子どもにまつわる情報をお伝えしております。
この内容は、県内子育て情報誌「ちびっこぷれす」の「午後10時、クリニックにて…〜おほしさまの先生からの子育て応援”談”!〜」に掲載されています。

 セミの鳴き声から鈴虫の音に変わり、季節は秋となりました。運動会があちこちで開催されています。ママはお弁当の中身を考えたり、パパはビデオやカメラの準備をしたり、本人と共に家族も盛り上がることができる行事だと思います。うちの3歳の娘は一人で鏡を見ながら運動会で踊る歌を歌ったり踊ったりして練習に励んでいます。

最近、山梨県人口100万人で話題になりました。山梨県って皆さんどんな印象でしょうか?私は県外出身者ですが、山梨県はとても住みよい県だと思っています。自然が豊かで温泉がある、その上お店に入るための長い行列もありません。東京に近く、家を建てようと思えば東京に比べ地価が安い、また保育園に入りやすい、朝の車の渋滞も少ないなど、心に余裕が持て人間らしい生活ができます。心と体がともに元気でないと健やかな生活を送ることはできません。

今月はクリニックでよく相談を受けるこころの問題についてお話します。

 

  痛みの訴えは早めに対応

 胃腸炎や風邪でお腹や頭が痛いと訴える場合は数日で落ち着いてきます。この場合は嘔吐・下痢・咳・鼻水などの症状も伴います。反対に心の問題の場合、「頭が痛い」「胸が痛い」と訴えてきます。子育て中だと忙しいこともあり、対応を後に回しがちですが、ちょっとした訴えを見逃さずに対応することをお勧めします。共働きだと自分の時間さえなく日々過ぎていきます。お風呂、寝る前などちょっとした短時間に「今日はどうだった?」「保育園、楽しかった?」などの声かけをして子どもの答えとその表情を見ていただくことが大切です。できれば、親と1対1で対応できるとお子さんの精神状態が安定しやすいと思います。

 

子どもへの接し方

 こころの問題が大きくなってくると体がストレスに耐えられず、痛みなどの訴えとして症状がでてきます。ストレスから体に症状としてでてくることをお子さんもご両親も知っていることが大切です。痛みがあるからといって、痛み止めの薬を飲むだけでは痛みを繰り返すので、こころの治療もする必要があります。まずはお子さんの話をしっかり聞き、体を休ませることが第一歩です。対応が遅くなると、回復するにも時間がかかり、将来、不登校や引きこもりへつながることもあります。こういった問題は家族内だけで対応しがちですが、専門家である医療機関からの客観的な評価を受けながら対応することで家族内の安定にもつながります。夫婦のバランスも大切で、パパとママ2人で対応してください。ママが頑張り過ぎて子どもの問題が非協力的なパパの問題にすり替わり、夫婦不和に発展しかねません。

 

クリニックの相談例

 4~5歳のお子さんが「おしっこの回数が多く、1時間に何回もトイレに行き困っている」というようなケースによく出会います。話を聞くと、運動会やお遊戯会の練習がきっかけになることも多く、まじめで頑張り屋さんに多く見られます。「また、トイレに行くの?」とは言わず、困ったことがないか聞き、係りなどを精一杯がんばっている場合はその思いを受け止めていただくと軽快したりします。

また、新学期が始めると、学校・クラス・担任の先生が変わることで、腹痛・胸痛などの訴えがでてきたりします。大人以上に子どもは変化に弱いものです。子どもを守ることができるのは親です。園や学校の先生と相談しながら子どものことを考えている、そうした親の姿はお子さんにとっては心強いものです。

 

困った時の相談先

 困ったら町の保健師さん、かかりつけの小児科医などに相談をしてください。さらに困る場合は心療内科・精神科に相談しましょう。子どもは対応できないと言われるかもしれません。子どもの精神科を児童精神科といいます。

山梨県では甲府市北新にある「こころの発達総合支援センター」に児童精神科医が在籍しております。しかし少ないスタッフで相談が多く、受診するまでに数か月待ちになっているのが現状です。困っているお子さんやご両親がたくさんいらっしゃいます。症状が重いケースでは小児科医では対応できない場合も多く、当センターの拡充を強く希望しています。

 

参考文献

日本小児心身医学会 ホームページhttp://www.jisinsin.jp/index.htm

今年の夏はこれまでの夏と異なり、互いに節電を意識しながら生活をしていきましょう。エアコンの設定温度を上げるなどの節電対策をしながら、水分を適切にとり、熱中症にならないように気をつけたいものです。今回の原発事故は私たちが使用している電気をどうするかを問われています。私たちは県内の電気をどうしたらいいのかを考える必要があります。山梨県は他県と比べて日照時間が長く、自然に恵まれ水が豊富にあります。県内の電気をどうするかを考え提言することは私たちが被災者の方々にできることではないでしょうか?

 わが家の高1の長男が高校の将棋部に入ったことをきっかけに、先月、息子から将棋をしようと初めて誘われ対戦しました。結果は2戦して全勝でした。父親として手を抜かず真剣に勝負をして勝ったこと、また幼い頃とは違った子どもの成長の2つの喜びを感じました。

 今月はPTSDというこころの病気に関する話をします。

 

PTSDとは

 PTSDとはPost Traumatic Stress Disorderの略で、心的外傷後ストレス障害と言います。不慮の事故や災害などにより思いがけない体験が心の傷となり、後にその記憶が様々なストレスとなり、不眠や不安・悪夢や恐怖・無気力感などの症状が現れます。子どもの場合、指しゃぶりをしたり、母親から離れないなどの退行現象が起こったりすることもあります。

PTSDという言葉は阪神・淡路大震災の後、マスコミで大きく取り上げられて多くの人に知られるようになりました。その後、大きな事件や出来事が起こるたびにPTSDが注目されるようになりました。

多くの人はショックな出来事を経験しても時間経過とともに心身の安定を取り戻していきますが、子どもは自我が未発達であることもあり、大きな出来事が起こるとこころが不安定になります。そのため、赤ちゃん返りなどが起こり、安定を求めるようになります。短期間であれば問題ありませんが、1ヶ月以上これらの症状が消えないときは専門的な関わりが必要になってきます。

5月、私の妻が保育士らと一緒に、被災地(岩手県山田町)の子どもたちの保育ボランティアに行ってきました。被災地の子どもが保育士に甘えるようにまとわりついたり、抱っこをせがんできたり、通常の年齢の子より幼い行動がみられ、こころが不安定な状態であったと知らされました。

 

PTSDにならないために

親の適切な対応で子どもたちの心の傷を癒すことができます。今回の震災のような大災害などが起こったときの子どもたちの動揺を大人がどのように対応していけばいいのかについて箇条書きで、分かりやすく書いてある冊子をご紹介します。日本小児科医会から発行されている「もしものときに・・・子どもの心のケアのために」というもので「http://jpa.umin.jp/download/kokoro/PTSD.pdf」から無料でダウンロードできます。その冊子には、親が子どもに対して「大丈夫だよ」と言葉に出して子どもに伝えること・子どもの話に耳を傾けること・赤ちゃん返りをしてもバカにしないこと・十分なスキンシップをとることなど、子どもに安心感を与えるように対応することが大切だと述べられています。さらに、親自身も動揺しているため信頼できる人に話をすること・がんばりすぎないように自分のペースを守ることなどが大事であると付記されています。

 

PTSDは他人事ではない

PTSDは被災者の方々だけではなく、私たちにも関わってくることだと思います。まだまだ収束しない原発問題で今後も私たちは不安を抱きながら生きていくことでしょう。大人が不安になると、子どもも不安になります。例えば、テレビで原発や津波のニュースを見ていてお子さんが不安になるようでしたら、子どもがいない時に見るようにしてください。お子さんが不安そうであれば、たくさん抱きしめてください。また、震災に関連する質問をしてきたらわかりやすく話をしてあげてください。こうした対応でお子さんを安心させることができます。

 

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