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院長コラム

予防接種

小児科医から最新の医療情報と県内の子どもにまつわる情報をお伝えしております。
この内容は、県内子育て情報誌「ちびっこぷれす」の「午後10時、クリニックにて…〜おほしさまの先生からの子育て応援”談”!〜」に掲載されています。

 新年あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。昨年から猛威を振るう新型コロナウイルスの影響で、みんなが生活に不自由さを感じています。新型コロナウイルスのワクチンについて海外からの報道が期待されています。まだまだ終息が見えませんが、コロナの患者さんを診ている医療従事者の方々のためにも、無理をせず、私たち1人1人が配慮をしていきましょう。

 寒くなり、家の中で過ごしがちになる冬は子育てをゲーム・メディアに頼りがちになりますが、子どもがメディア漬けにならないように、親が意識して子どもと関わることが必要です。うちは小2の娘にゲームの時間を1日15分と決めています。親としては子どもとトランプ・カルタをしたり、バトミントンをしたり家の手伝いも一緒にしながら、なるべくゲーム・メディアから遠ざけるように気をつけています。子どもは基本的にはゲーム・メディアよりも親との触れ合いを求めています。

 今回、インフルエンザワクチン接種時にHPVワクチンについての質問がありました。積極的勧奨が中止となってすでに7年が経ち、経過を知らない方も多くいると思いますので、今月はHPVワクチンについて状況をお伝えいたします。

 

ヒトパピローマウイルス(HPV)とは

ヒトパピローマウイルス(HPV)は皮膚や粘膜に感染するウイルスで、100以上の種類があります。子宮頸がん以外に中咽頭がん、肛門がん、腟がん、外陰がん、陰茎がんなどにも関わっていると考えられており、海外では感染予防のためにHPVワクチンをオーストラリアなどの24か国は男性にも公費負担が行われ、日本でも先月から男性の接種への適応拡大についても検討されています。

 

子宮頸がんについて

 子宮頸がんは子宮の入り口付近にできるがんで、20~40代の女性を中心に毎年、約1.1万人が新たに診断され、年間約3,000人が亡くなっています。30歳代までにがんの治療で子宮を失ってしまう(妊娠できなくなってしまう)人も、毎年約1,200人います。性的な接触によってHPV(ヒトパピローマウイルス)の感染が原因と言われ、感染してもほとんどの人は自然に消えますが、一部の人でがんになってしまいます。

 HPVワクチンは感染を防ぐことができ、将来の子宮頸がんを予防できることが期待できます。さらに、20歳をすぎたら2年に1度の子宮頸がん検診受診が大切です。

 

HPVワクチンのリスク

 2013年4月から定期接種化され接種が始まりましたが、副反応とみられる症状が報告されました。同年6月に積極的勧奨が中止となっています。HPVワクチンのリスクは、接種後に接種部位の痛み・腫れ・赤みなどがあり、重い症状(重いアレルギー症状、神経系の症状)が1万人あたり5人とまれに起こりますが、その約9割は回復することがわかっています。国は重い症状が起こった場合に対応できる医療機関を全国に設置し、相談窓口も整備されました。

 

HPVワクチンの効果

 HPVワクチン効果は「子宮頸がんワクチンが、がんの原因となるHPVの感染を防ぐ」、「子宮頸がんワクチンは前がん病変を防ぐ」というデーターだけでしたが、2020年10月、スウェーデンの研究チームがアメリカの医学誌に世界で初めて「HPVワクチンを接種すると子宮頸がんになるリスクが5割低下すること」を発表しました。2006~2017年の間、10~30歳だった約167万人の女性を対象に4つのウイルスの型に有効なワクチン接種と子宮頸がんの発症との関係を調べました。その結果、17歳未満で接種した場合のリスクが88%減りました。

また、接種後に重い症状が報告されていましたが、2015年に行われた名古屋市の約3万人のアンケート調査では、24種類の「多様な症状」の頻度がHPVワクチンを接種した女子と接種しなかった女子で有意な差がありませんでした。

現在、WHO(世界保健機関)でも「HPVワクチンは極めて安全性が高い」とされ、世界80か国以上が定期接種化されています。日本産婦人科学会や多くの学術団体も積極的な勧奨再開への要望書を国に強く求めています。2020年10月からは厚生労働省より市町村へ対象者に個別通知を出すように通知が出されました。再開へ一歩ずつではありますが、前向きな動きが見られています。

現在でも、HPVワクチンは定期接種であるため、対象者(小学6年生から高校1年生の女子)は無料で接種できます。当院では接種をお勧めしていますが、年に数人の接種しかありません。今回、HPVワクチンについてまず、知っていただけたら幸いです。

 

参考文献

厚生労働省ホームページ

日本産婦人科学会ホームページ

 先月クリニックで、季節外れのインフルエンザ感染者が出て大変驚きました。幸い重くなる人は少なく安心しました。近くの園や小学校でもインフルエンザによる学級閉鎖等の報告がありました。また同時期に沖縄ではインフルエンザ警報が発表されたそうで、今後の発生状況に注意する必要があります。

先月、ここ数年恒例になったSSPE(亜急性硬化性全脳炎)という難病の親の会が主催するサマーキャンプに妻と娘と一緒に参加してきました。患者さんの父親から今年1月、お子さんが成人式に出席した話を聞きました。「この病気にかかり車いす生活となったことで、自分も付き添いで成人式に参加することができよかった。この病気にならなければ自分が参加することもなかった。」と何事にも前向きな父親からの話でした。このような両親に見守られているお子さんを本当に幸せだと感じ、今後もこの親の会を応援したいと思いました。

日頃このコラムでは子どものことを中心に書いていますが、今月は育児をする親に目を向けたいと思います。予防接種は以前に比べて、多くの種類が存在していて、そのほとんどは0歳~1歳のお子さんに接種しています。一方で昨年、大人の予防接種について推奨するホームページ(オトナのVPD)が開設されました。予防接種は子どもだけではなく、大人も大切なものです。

 

オトナのVPDって

 VPD(Vaccine Preventable Disease)とは「ワクチンで防げる病気」のことです。現在、多くのワクチンがありますが、接種すれば免疫が獲得され病気にかかりづらい体になります。VPDにかかっていない場合、子どもだけでなく、大人もワクチンを接種することが重要です。

オトナのVPDのホームぺージには「思春期・青年期(10~20代)」・「子育て世代」・「現役ミドル世代(40代~)」・「シニア世代(60代~)」と年齢別に4つ分かれています。自分の世代をクリックするとお勧めのワクチンが記載されています。読者の世代である「子育て世代」では麻しん・風しん・おたふくかぜ・水痘は大人でかかると重くなるので2回接種を勧めています。『妊婦さんにはインフルエンザワクチンをすることで、移行抗体で新生児の赤ちゃんを予防する効果があること』・『家族やパートナーがB型肝炎キャリアの場合は直ちにB型肝炎ワクチンを接種すること』・『子どもの時期に接種したワクチンの中で日本脳炎や破傷風は大人になると免疫が低下するため、日本脳炎流行地域に渡航する場合は追加接種をすること』・『破傷風は災害でのボランティア活動時は事前にワクチン接種をすること』が勧められています。

シニア世代には重症化しないようにインフルエンザワクチン・肺炎球菌ワクチン・帯状疱疹後の神経痛はつらい症状が長く続くため水痘ワクチンを勧めています。

 

思春期・青年期のお勧めワクチン

 子育て世代と同様に麻しん・風しん・おたふくかぜ・水痘のワクチンを2回接種することだけでなく、性交渉などでB型肝炎が感染するのでB型肝炎ワクチン3回接種をお勧めしています。

 さらに、子宮頸がんの原因となるHPV(ヒトパピローマウイルス)感染症を予防するHPV(子宮頸がん)ワクチンもお勧めです。子宮頸がんは性交渉によってHPV(ヒトパピローマウイルス)に感染し、持続感染することでがん化するVPDです。日本での患者数は年間約1万人、20代後半から増加し40代以降は概ね横ばいになります。早期に発見されれば比較的治療しやすいといわれていますが、年間約3,000人が死亡しています。

HPVワクチンは6年前から小学6年生から高校1年生までを対象に定期接種となりました。その2か月後、接種後の慢性疼痛などの有害事象報告があり、一時的に積極的な勧奨接種が差し控えられています。しかし、一方で現在でも定期接種のワクチンとして原則無料で受けることができます。副反応出現時には定期接種として救済します。HPVワクチン接種後の慢性疼痛などの症状とワクチン接種には科学的な因果関係がないことが国内の研究でも明らかになっています。3年前に名古屋市が7万人以上を対象に大規模な疫学的研究(名古屋スタディ)を実施した結果、HPVワクチン接種後にワクチンとの関連が疑われた症状の発生頻度はワクチンを接種した人とワクチンを接種していない人の間で違いが認められませんでした。関連学会などが勧奨接種の再開を国に求めています。日本で認可されているHPVワクチンは2価(HPVウイルス2種類)と4価(HPVウイルス4種類)で7割の効果がありますが、現在、アメリカでは9価(HPVウイルス9種類)ワクチンに変わり、9割の効果があると言われています。日本でも早く勧奨接種が再開され、9価ワクチンになることを切望します。

 

参考文献

「オトナのVPD」ホームページ http://otona.know-vpd.jp/

 待ちに待った春到来。寒さに弱い私は本当にうれしいです。桜が咲く頃の花見が待ち遠しいです。うちの娘(5歳)は私がよく「真剣に」という言葉を使うのを聞いていたようで、私たちとトランプの神経衰弱をしたとき、娘が何枚も続けて取れたので「すごいね」とほめたら、娘は「だって真剣にやっているからね」と真剣に言っていました。私の口癖を真似したのだと夫婦で大笑いしました。娘は最初何で笑っているのかわからない様子でしたが、私たちの大笑いに続いて笑っていました。今月は入園前の準備の一つである予防接種についてお話したいと思います。

VPD、知ってますか?

 VPD(Vaccine Preventable Disease)とは「ワクチンで防げる病気」のことです。予防接種は現在、4種混合・BCG・麻疹風疹・ヒブ・肺炎球菌・水痘・B型肝炎・日本脳炎の8つが定期接種、ロタウイルス・おたふくかぜ・インフルエンザの3つが任意接種に分かれています。定期接種と任意接種どちらのワクチンも接種すれば、免疫が獲得され病気にかかりづらい体になります。ワクチンを接種して大切なお子さんを病気から守っていきましょう。
 任意接種のワクチンは希望がある場合のみと思われがちですが、そんなことはありません。任意接種のワクチンも含めてすべてのワクチンをお勧めします。ロタウイルスワクチンを接種することで乳幼児がかかると重くなる胃腸炎が軽くなります。私の経験上、ロタウイルスワクチンが導入され、胃腸炎にかかっても症状が軽い場合が多く、入院や外来で点滴をするケースが導入前より大幅に減っています。

受けるタイミングを逃してしまった場合

 いろいろな事情で接種ができていない場合、かかりつけ医や市町村の保健師さんに相談をしましょう。定期接種のワクチンは接種できる年齢が決まっています。該当年齢を超えてしまった場合は接種しないとあきらめないで下さい。自費になってしまいますが、かかりつけ医で接種することができます。定期接種の水痘ワクチンは2回接種を2歳までに行うようになっていますが、3歳過ぎても、自費なら接種はできますので接種をお勧めします。

母子手帳で確認しよう!

 今すぐにお子さんの母子手帳の中にある予防接種欄を開いて見てください。適切に予防接種ができていますか?今は多くのワクチンがあるので、不安な方はかかりつけ医や市町村の保健師に相談をしていただけると教えてくれます。
 予防接種のポイントは「生後2か月」になったらワクチンデビューすることです。特に百日咳は赤ちゃんがかかると重症化して死に至ることがあります。百日咳が含まれている4種混合ワクチンは生後3か月にすぐに接種してください。生後2か月から4週ごとに接種が続きますが、順調に進めば、生後6カ月過ぎると該当するワクチンがなくなります。そして1歳になると再び予防接種が始まります。入園すると病気をもらい予定していたワクチンが遅れてしまい、入院してさらに遅れる悪循環になってしまうお子さんもいます。
 来月小学生になる年長さんは、3月末が期限である「麻疹風疹混合ワクチン」を済ませましたか?まだ接種していない場合は3月31日までに接種をお願いします。また、B型肝炎ワクチンは生後11か月まで、水痘ワクチンは2歳代までなどと期限がワクチンによって異なっています。ぜひ一度ご確認ください。

副反応が心配ですか?

 昔、ワクチンの安定剤として使われていた「ゼラチン」でアレルギーを起こし、死亡者を出したこともありましたが、現在はゼラチンを使用していません。生ポリオワクチンはワクチン接種でポリオを発症する恐れがありましたが、2012年9月からワクチンによるポリオを発症する恐れのない不活化ワクチンに切り替わりました。
 熱や接種部位が腫れることは現在もありますが、大きな副反応とは言えず、熱は1日程度、腫れも数日で治まる程度のものです。副反応を恐れてしまい、ワクチンをしないと病気にかかる可能性があります。
 例えば、おたふくかぜワクチンをすると、数千人に1人(0.05%)、無菌性髄膜炎が起きます。しかし接種せずに自然にかかると100人に2人程度(2%)、無菌性髄膜炎が起きます。ワクチンを接種した方がはるかに少ないことが明らかになっています。さらに日本耳鼻咽喉科学会の全国調査ではおたふくかぜに自然にかかり、ここ2年間で336人が難聴にかかったということが判明しました。難聴にかかると現在では完治することができません。おたふくかぜワクチンもお勧めします。小児科医や耳鼻科医はすべての予防接種を定期接種化することを願ってやみません。

参考文献

「VPDを知って、子どもを守ろうの会」ホームページ http://www.know-vpd.jp

少し前まで暑さが残っていましたが、急にひんやりとして秋が深まってきました。小児科はこの時期からインフルエンザワクチン接種が加わり、年内まで忙しい日々が続きます。私は朝、娘の連絡帳に日々の成長で気づいたことや園に伝えたいことなどを書きます。上の4人の子どもの時にはできなかったことで、保育士さんから園での様子を書いていただいて残った文章が子育てでの貴重な財産になっています。毎日いそがしい中連絡帳を書いているお母さん・お父さん、お子さんが大きくなったときにどんなに大切にされていたのかを伝えることができます。大変かと思いますが、一緒に書いていきましょう。今月は先月から定期接種化が始まったB型肝炎ワクチンについてお話します。

 

B型肝炎について

日本でのB型肝炎ウイルスの感染者は約100万人(約100人に1人)と推定されています。ウイルスが体に入ると肝炎が起こることもありますが、自覚症状がないことも多く、偶然行った血液検査で初めて感染に気付くこともあります。3歳以下の子どもが感染すると、キャリア(ウイルスを体内に保有した状態)になりやすく、キャリアになると約10%が慢性肝炎になると言われています。慢性肝炎になると将来、肝硬変や肝がんに進行することもあるため、低年齢での感染予防は重要です。また、B型肝炎ウイルスに感染すると急性肝炎から劇症肝炎を起こし死に至ることや、抗がん剤治療で免疫力が低下することで重症の肝炎が起きることもあります。
B型肝炎ウイルスは数種類のタイプがあり、日本において流行していた遺伝子型Cは慢性化することが少ないタイプだったため、問題になっていませんでした。しかし、最近慢性化しやすい遺伝子型Aというタイプが広がってきたため、慢性肝炎→肝硬変→肝がんへと進行することが心配されています。感染すると、キャリア化し将来の慢性肝炎→肝硬変→肝がんへの進行・長期にわたり新たな感染源になるという点で問題になります。

感染経路は血液だけではなく、唾液や汗、涙などにも含まれています。母子感染だけではなく、乳児期に父などからの感染や大人になってからの性交渉からの感染(水平感染)も考えられ、さらに感染経路がわからない場合もあります。保育園や学校の部活動を通じての集団感染事例も報告されています。

 

先月からようやく定期接種化

日本のB型肝炎対策は、1986年、キャリアの母親からの感染(垂直感染)予防から始まり、母子感染は減ってきました。しかし、予防スケジュールがしっかりと行われなかったり、水平感染もあることから、この対策だけではB型肝炎を制圧できない状態が現在も続いていました。

WHO(世界保健機関)では、世界中の子どもたちに対して生まれたらすぐに国の定期接種として接種するように指示しています。WHO加盟国95%以上の国々ではWHOの指示通りに定期接種になっていて、B型肝炎の患者さんが激減しました。日本も先月からようやく定期接種化されました。

対象は平成28年4月1日以降のお子さんで、生後2か月に1回目、4週あけて生後3か月で2回目、1回目から20週あけて生後7~8か月ごろに3回目を接種します。注意点としては平成28年4月生まれのお子さんは生後11か月までに3回接種しなければなりません。もし3回目接種が1歳超えた場合、自費になりますが、3回目をしっかりと接種してください。効果は20年以上続くと言われています。お母さん以外の同居家族内にHBVキャリアがいる場合などで感染リスクが高い場合は早く免疫をつけるために生後2か月より前にB型肝炎ワクチンの接種を開始することが可能です。もし、そのようなご家庭がありましたらかかりつけ医にご相談下さい。
なお、お母さんがHBVキャリア(お子さんが母子感染予防の対象)の場合には、赤ちゃんのB型肝炎ワクチンの接種スケジュールは異なります。1回目を出生直後(12時間以内)に、抗HBsヒト免疫グロブリンと同時接種し、その1か月後に2回目、1回目から6か月後に3回目を接種します。

 

参考文献

B型肝炎ワクチンに関するファクトシート  国立感染症研究所(平成22年7月7日版)
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000000bx23-att/2r9852000000bxqf.pdf

B型肝炎ワクチン作業チーム報告書
http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000014wdd-att/2r98520000016rr1.pdf

VPDを知って、子どもを守ろう。http://www.know-vpd.jp/

ようやく夏が終わり過ごしやすくなってきました。夏休みが終わったことで、学校や園では運動会などの練習が行なわれている頃かと思います。この時期診療しているとお子さんの頭痛、腹痛などの不定愁訴での相談がみられます。かぜや胃腸炎が原因の場合もありますが、1週間以上続く症状があれば、運動会の練習による疲れで症状がでている場合があります。親は晴れの舞台を見ようと子どもに期待してしまいますが、中には練習に耐えきれずに体にまで症状がでて困っている子どもたちがいます。子どもに何らかの変調を感じた場合は時間を取りきちんと話を聞く姿勢が予防につながります。

昨年3月末に世界保健機関から日本が「排除状態」になったと認定を受け、麻疹の持続的な感染がなくなったと安堵していた矢先、今年8月から麻疹の患者数が増えてきました。国立感染症研究所によると9月13日、全国で今年に入り82人と関西国際空港・保育園(兵庫県尼崎市)での集団発生も報じられ、関西・関東にも広がっています。県内にも感染が広がってくるのは必至です。今月は麻疹についてお話します。

 

麻疹を知る

最近、麻疹の報道を耳にし、多くの方が不安を抱いていると思います。相手を知るつまり麻疹のことがわかると過剰な心配をしないで済みます。麻疹は麻疹ウイルスによって起こり、感染力は非常に強く、空気感染・飛沫感染・接触感染によってうつります。感染から約10日後に熱・せき・鼻水などの症状がでて、その後全身に発疹が出てきます。肺炎・中耳炎の合併症を伴うことも多く、1000人に1人が死亡する重い病気です。特効薬はなく、予防法は予防接種をすることです。日本産婦人科学会からは妊婦さんがかかると重症化しやすく流産・早産にもつながるため、感染者が多い場所への外出を控えるよう呼びかけています。診断はインフルエンザのような迅速でできる検査はなく、症状が熱・咳・鼻水といったかぜと同じような症状であるため、初期の診断は困難です。また麻疹ワクチンをしている人でもかかる可能性はあり、症状が軽くなる半面、診断はさらに難しくなります。

 

かからないようにするために

今年かかった82人の内訳では20~30歳代が6割、ワクチン接種していない方が多くいることがわかっています。麻疹ワクチンを接種していない人はすぐに接種していただきたいです。一番心配なのは体力もないまだ免疫もまったくない1歳前のお子さんです。1歳になったらすぐに接種をしてください。2期の対象である年長さんはまだ接種をしていない場合は早く接種をお願いします。保育園や幼稚園の先生方は園児さんの接種状況を確認して勧奨していただくと助かります。大人の方で麻疹にかかってなくワクチンもしていない人も接種をお勧めします。ご夫婦で自分の母子手帳をみて確認しましょう。接種回数は1回では免疫が不十分ですので2回接種がお勧めです。今後、状況によっては希望してもワクチンがなくなる恐れがありますので早めに医療機関に問い合わせて下さい。

 

SSPE(亜急性硬化性全脳炎)青空の会代表と患者さんらも厚生労働大臣へ訴え

先月初旬、東京で麻疹の怖さやワクチンによる予防の大切さを訴える集会が開かれ、先月号でお話しした「SSPE青空の会」代表の患者さんも含めた家族も参加し、厚生労働大臣にその要望書を手渡しました。この集会は医師が主催しましたが、麻疹にかかったSSPEの患者さんまでもが予防接種の啓蒙を訴えた姿に胸を打たれました。NHKや民放でもテレビで取り上げられていました。私自身はこの集会に参加できませんでしたが、医師と患者さんの両方で麻疹を含めた予防接種の必要性を伝えた非常にインパクトのある会だったと思います。

 

今月からB型肝炎ワクチンの定期接種開始!~今年4月・5月生まれのお子さんはご注意を~

特に平成28年4月生まれの方は接種間隔も決まっているため、10月に入ったらすぐに接種を始めないと3回接種が完了できなくなる恐れがありますので早めに接種しましょう。B型肝炎ワクチンについては来月号で改めてお話します。

 

参考文献

国立感染症研究所ホームページ


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