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院長コラム

平成25年7月号(Vol.99)
食物アレルギー~アナフィラキシーショックの対応法~

2013/07/01(更新日)

梅雨明けすると夏本番ですね。山梨の夏はとても暑いので、熱中症に気をつけてお過ごしください。朝、昼にシャワーを浴びたり、水遊びを取り入れることが熱中症だけでなく、あせも(汗疹)予防にもつながります。

 先月、風疹が流行中であることから県内の多くの市町村で風疹ワクチンの助成が始まるというとてもうれしいニュースが入ってきました。多くの人に利用し接種が広まることで風疹の流行が落ち着くことを期待します。風疹にかかった場合は他人に広げないような配慮をお願いします。

 昨年12月、東京・調布市の小学校でチーズなどにアレルギーがある5年生の女子児童が給食を食べた後に亡くなるという事故がありました。食物アレルギーのお子さんや保護者をはじめ、園や学校の関係者の方々は大きな衝撃を受けたのではないかと思います。これをきっかけに私も各方面から相談を受けることが多くなってきました。今月は食物アレルギーの症状の中でも重症と言われる「アナフィラキシーショック」への対応についてお話をします。

 

アナフィラキシーショックって

 先日牛乳アレルギーのお子さんが子育てサークルで出されたピザを食べたところ、牛乳が入っていたようで体にじんましんが出て、咳がひどくなり、さらに顔色も悪くなるアナフィラキシーショックの状態になり、搬送されてきたというお子さんを診察しました。何回かアナフィラキシーショックを経験しているお子さんで、お母さんも食材には非常に気を使っていたようですが、確認した(牛乳不使用)にもかかわらず実際には混入していたようで除去の大変さを痛感しました。

一般的な食物アレルギーの症状は、じんましん・咳・下痢などがあります。複数の臓器に症状が出現する状態を「アナフィラキシー」と呼び、その中でも血圧が低下し意識レベルの低下や脱力を来すような場合を特に「アナフィラキシーショック」と言い、この場合は直ちに対応しないと生命にかかわる重篤な状態になります。

 平成13・14年の食物アレルギー全国調査(厚生労働科学研究)によるとアナフィラキシーショックの頻度は10%程度あり、決してまれなことではありません。アナフィラキシーショックが起こった場合、まず救急車を呼び医療機関に向かう体制をとり、同時並行で、処方されている方はアドレナリンの自己注射薬である「エピペン」を注射することが効果的です。30分以内にアドレナリンを投与することが患者の生死を分けると言われています。

 

エピペンをうまく利用するには

エピペンは2011年9月から保険適応となったため、急速に普及しています。体重15kg以上の方でアナフィラキシーがあった場合やそのリスクが高い場合が対象です。エピペンを使うタイミングとしては意識がなくなるようなショック症状に陥ってから使用するのではなく、その前段階である頻発する咳・ゼーゼーや呼吸困難などの症状がある段階での使用がより効果的であると言われています。必要性を判断した場合は、躊躇せずに勇気を持ってエピペンの投与を行なってください。エピペンの副作用は小児では血圧上昇や心拍数増加がありますが、軽い症状であると考えられています。調布市のケースでも見られたように、家庭だけではなく園や学校においてもエピペンの必要性が求められています。子ども・保護者・かかりつけ医のみならず、園や学校の先生方との連携も非常に大切です。

 

最近の動き

原因食品が食べられるかどうかはアレルギー検査だけでは判断に限界があり、食物負荷試験を実施しないと最終的に解除できるかわかりません。県内でも食物負荷試験を実施できる病院(山梨厚生病院・甲府共立病院・大学病院など)が増えてきました。このおかげで医療設備が整ったところで安心して負荷試験ができ、検査が陰性でなくても負荷試験で解除できるようになってきています。さらに、これまでの治療は除去主体でしたが、除去だけでは治らないお子さんに「食べて治す」という経口免疫療法という治療も始まっています。この治療はまだ研究段階であるため食物アレルギーの専門医が対応しています。

 

参考文献

保育所におけるアレルギー対応ガイドライン 厚生労働省

食物アレルギー診療ガイドライン2012

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