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院長コラム

平成26年7月号(Vol.111)
変わりつつある食物アレルギーの対処法

2014/07/01(更新日)

まもなく梅雨が明け夏本番になります。7月7日は七夕。毎年うちの保育園から七夕の短冊が配られますが、今年は短冊に「長生きできますように!」と書きました。30代の頃は人生まだまだ先は長いという思いでしたが、40代に入り折り返し地点を過ぎた頃から健康を意識するようになりました。通勤は自転車です。

さて、2年前に東京・調布市の小学校でチーズなどにアレルギーがある5年生の女子児童が給食を食べた後に亡くなるという事故がありました。これをきっかけに園や学校で食物アレルギーの対応が厳格化し、アナフィラキシー時に医療機関外で使用できる「エピペン」の登場も加わりました。医療の進歩と保育・教育現場の体制の変化により、5~10年前の知識では対応ができない状況にあります。昨年7月の「エピペンの対応について」に引き続き今月は食物アレルギーについてお話します。

 

食物アレルギーとは

 食物アレルギーは乳児で5~10%、幼児で約5%、学童期以降では1.5~3%の発症頻度があり、決して珍しい病気ではありません。原因食物は卵・牛乳・小麦の順で多いです。症状はじんましんなどの皮膚症状が最も多く、咳や下痢などの症状もあります。10%でショック症状と言われるアナフィラキシーがあり、生命をおびやかすほどの重いアレルギー症状がでることがあります。

食物アレルギー診療ガイドライン2012によると、食物アレルギーとは「食物によって引き起こされる抗原特異的な免疫学的機序を介して生体にとって不利益な症状が惹起される現象」を言います。難しく書いてありますが、要するに食物を食べじんましんなどの症状がでる病気です。初めて卵を食べたら全身にじんましんがでたり、回転ずしで‘いくら’を食べたら口唇が腫れて目や耳にまで赤みが広がってきたりするというのがよくあるケースです。口のまわりが赤くなる場合、食物アレルギーかどうかと心配される場合があります。皮膚が荒れていると皮膚に付いて赤くなりやすく、食物アレルギーと間違いやすいこともありますので、自分勝手に決めつけず、きちんと診断をしてもらうことをお勧めします。

 

特異的IgE抗体検査は万能ではない

食物を食べてなく、特異的IgE抗体検査が陽性だけの理由で陽性の食品をすべて除去しているお子さんがいます。問診から原因の明らかな食物がはっきりわかる場合はその食品だけを除去することに問題ありませんが、検査で陽性になっただけで除去する必要はありません。

特異的IgE抗体検査で「陽性=除去」ではありません。この検査は感作されている(感じやすい状態)かどうかを知るものです。陽性は症状がでるかどうかをみているのではありません。

 

プロバビリティカーブって?

 特異的IgE抗体検査で値が高いほどアレルギー症状がでやすい傾向にあります。最近、診断にプロバビリティカーブを利用するようになってきました。プロバビリティカーブは食物を食べて症状がでる可能性と特異的IgE抗体価の関係が曲線として示されています。食物・年齢によって曲線が異なり、例えば、ミルクの特異的IgE抗体価が3.0 UA/mlの場合、症状がでる可能性は1歳未満で約90%、1歳で約50%、2歳以上で約30%と判断できます。このカーブを利用し診断や負荷試験の決定をしています。まだ全食品に対応はできていませんが、現在卵白・ミルク・小麦では利用できます。

 

食物負荷試験をうまく利用しよう!

食物アレルギーの診断や除去解除にプロバビリティカーブを利用しても確率でしかわかりませんので、最終的には食物負荷試験を行います。検査値が陽性だけで除去をしている場合は一度食物負荷試験を試すことをお勧めします。

食物除去は日々の生活の質を下げます。ただでさえ忙しい子育てに除去が加わると負担が増えるばかりです。ガイドラインには必要最小限の食物除去、つまり食べられる子には食べさせることが大切だと言っています。

 

予防法はありますか?

食物アレルギーにならないように予防ができないかと世界中で多くの研究が行われてきましたが、現段階で食物アレルギーを予防する方法は明らかにされていません。妊娠・授乳中の母親自身の食物制限や児の食物摂取を遅らせたりすることは発症予防につながりません。通常どおりの離乳食スケジュールで進めてください。

 

参考文献

保育所におけるアレルギー対応ガイドライン 厚生労働省

食物アレルギー診療ガイドライン2012

食物アレルギーのすべて 南山堂

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