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院長コラム

平成29年1月号(Vol.140)
食物アレルギーの最新情報~食べさせるには?~

2017/01/01(更新日)

新年あけましておめでとうございます。子どもの貧困や虐待・保育園待機児童問題など子どもに関わる課題は山積していますが、今年は昨年よりも少しでも子育て環境がよくなることを願うばかりです。皆さんに前向きに元気に明るく子育ていただくために、今年も最新の医療情報を皆様に提供していきたいと思います。どうぞよろしくお願いします。

私事ですが、東京で生活をしている大学生の息子との連絡にLINEを利用し意思疎通を図るようになってしまいました。当初は電話で肉声を聞く方がいいと思っていましたが、大学生はLINEに慣れていて、遊びやバイトに忙しいのか電話がなかなか通じず、あきらめてLINEを利用するようになりました。やってみるとその方がすぐにやり取りでき、なかなか便利です。

さて昨秋、5年ぶりに「食物アレルギー診療ガイドライン2016」が発刊されました。今月は最新の食物アレルギーについてお話します。

ガイドライン改訂ポイント

 昨年改訂された「食物アレルギー診療ガイドライン2016」には大原則である「正しい診断に基づいた必要最小限の食物除去」をさらに積極的に推し進めて「原因食品を可能な限り摂取させるにはどうすればよいか」という方向性が示されました。まず、診断をしっかりとすることが大事です。特異的IgE抗体検査という血液検査をして陽性だけで安易に除去を続けるのはよくありません。問診で様子をしっかりと聞き、血液検査も加味しながら診断していきます。除去になった場合、以前よりも積極的に食物負荷テストをすることで、完全除去を漫然と続けるのではなく早期から少量でも食べさせていこうと提言されています。
 例えば、0歳時に卵アレルギーと診断された場合、4~5歳までずっと完全除去するのではなく、定期的に血液検査で経過を追いながら食べられそうな時期を見極めに早い時期から食物負荷テストをして除去を解除します。負荷テストの負荷量は卵なら全卵1個食べられなくても、少量(全卵1/32)程度から初め、その量が問題なければ加工品の多くは食べられ、少量の全卵が入っても問題ないため、食事の気遣いは大幅に軽減でき生活の質が大幅に改善されます。県内でも負荷テストを行なっている医療機関が増え、以前よりも負荷テストをしやすくなっています。

母親の食物除去必要なし

 妊娠中や授乳中の母親から食物アレルギー発症予防のために、自分自身の卵や牛乳などの除去が必要かよく質問されます。お子さんのために何かできないかという母の思いはよくわかります。世界各国からの多くの研究結果をまとめると、現在のところ、母親が特定の食物を除去することは効果がなく、除去をすることは母親の栄養状態に対して有害と言われています。さらにお子さんの離乳食についても開始時期を遅らせることで発症が予防できるというエビデンスもなく、離乳食開始時期は生後5~6か月でスタートし、主要アレルゲンである卵・牛乳・小麦についても少量から進めていただくことをお勧めします。

園や学校での対応

 4年前に牛乳アレルギーの小学5年女子が粉チーズ入りのチヂミを誤って食べて亡くなった件をきっかけに、園や学校での食物アレルギーの対応が厳格になっています。給食は完全除去か解除かの二者択一による提供が、調理の点からも単純化され誤食防止となり推奨されています。園では先生の近くで食べる、学校では他の生徒にもアレルギーのお子さんのことを理解してもらう等で誤食防止につながります。4月は進学や進級により環境が変化したり、慣れないことからいつにも増した確認が望まれます。また、誤食防止を強調しすぎると、別室で1人で給食を食べさせねばと考えることがありますが、そこまでする必要はないと思います。子どもにとって楽しい給食が、安全を重視しすぎることで負担になるようなことがないよう、かかりつけ医(可能であればアレルギー専門医)や学校(園)の先生と相談して下さい。食物アレルギーはアレルギーの中でも昨今進歩が進んでいる領域になっています。困っている場合は近くのアレルギー専門医(私も数少ない1人)にご相談下さい。アレルギー専門医は「日本アレルギー学会」のホームページで検索することができます。

参考文献

食物アレルギー診療ガイドライン2016 協和企画

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