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院長コラム

山梨県の小児科 げんきキッズクリニック 夜間診療・小児救急: 平成21年12月号(Vol.56)最新の食物アレルギーの治療

今年も残すところわずかになりました。新型インフルエンザによる学級閉鎖は今までになく多く、これから本格的なインフルエンザのシーズンに入り、今まで以上に混乱が予想されます。ご心配だと思いますが、冷静に対応してください。

10月に昭和町で開かれた「パパママ学級」で私の子育て経験についてや小児科医としてのアドバイスをしてきました。出産前のパパとママに話をすることは初めてで緊張しました。参加者に話を聞くと出産時の立会いを予定しているパパが半分程度しかいないことが少し残念でした。一生に1回しかないわが子の誕生の瞬間を夫婦で共有しない手はありません。立ち会いにはぜひ関わって、たいへんなママを支えてあげてください。ママの方で恥ずかしいなどの理由で立ち会いを拒む人もいるようですが、出産はパパの存在がたいへんありがたいものです。積極的に立ち会いをしてもらいましょう。うちの子は4人とも立ち合いましたよ。感動ものです。さて今月のテーマですが、10月末に秋田市で行われた日本アレルギー学会に参加しアレルギーの最新情報を学びましたので一部をご紹介します。

 

はじめに


アレルギーは2人に1人は診断を受けたことがある程、非常にポピュラーな病気になりました。ぜんそくは吸入ステロイドを中心とした治療法が広がり、アトピー性皮膚炎はステロイド軟膏の理解が浸透してきました。2つの病気は昔と比べコントロールが可能になってきました。一方で、食物アレルギーはぜんそくやアトピー性皮膚炎と比べると診断や治療法の難しさがあると言われています。そこで、食物アレルギーの基本と今トピックスとなっている「食べて治す経口減感作療法」についてお話します。
 
 

食物アレルギーの診断と治療

頻度が一番多いのは卵です。卵を食べて1時間以内に顔や体にブツブツがでてきた例はよくあります。食物アレルギーの頻度は乳児で10%あり、患者数は増加してきています。症状は発疹や下痢などがあり、血圧低下や意識がなくなったりするアナフィラキシーショックといった重い症状になることもあります。素人判断で必要以上に多くの食品を除去する場合もあり、医師の診断を受けることは大切です。
治療は除去が中心となります。ただ、漫然と除去をし続けることは成長期のお子さんにはつらいものがあります。食物アレルギーは多くの場合、年齢が進むにつれて食べられるようになってきますので、3~6ヶ月ごとに確認をする必要があります。確認には「特異IgE抗体」と「食物負荷試験」を組み合わせながら解除の時期を検討します。よく「特異IgE抗体」を調べますが、この結果の解釈は注意が必要です。陽性の場合、必ず除去しなければならないのではなく、参考程度となることを理解してください。最終的には医師の管理のもとで、実際食べて症状がでないかをみる「食物負荷試験」をしなければ解除の時期はわかりません。また、治療薬と考えられている「インタール」という内服薬があります。全国有数のアレルギー専門病院ではほとんど出す薬ではないので効果はないと考えてください。以上が「食物アレルギーの診療の手引き2008」(http://www.allergy.go.jp/allergy/guideline/05/02.html)にまとめてありますので参考にしていただけたら幸いです。
 
 

食べて治す~経口減感作療法~

食べて治すって本当なの?と驚いている人も多いと思います。私もこんな治療法があるんだと驚きました。食物アレルギーの患者さんの多くは、小学校入学までには原因食物を食べられるようになりますが、一部のお子さんはその時期を過ぎても避けなければなりません。小学校入学後も、少量食べてアナフィラキシーショックを起こす人もいます。そこで3年前から、一部のアレルギー専門病院で小学校入学後も食事制限されているお子さんに対して、「食べて治す、経口減感作療法」が始まりました。原因食物をある程度以上食べているとアレルギーが抑えられることがあり、この現象を経口減感作と言います。少量では症状がでるが、1年ほど毎日決められた量を食べ続けると、病気を克服することができる治療法です。この治療はまだまだ新しいものなので慎重に行っているのが現状です。また医師管理ももとに実施されている治療法です。個人では絶対に行わないでください。なお、10月17日に日本テレビ系列で放映されました。ご興味のある方は以下の動画(http://www.dai2ntv.jp/news/mesen/index.html)を参照ください。

楽しかった運動会が終わり、秋が深まってきました。最近、我が家ではUNOというカードゲームが流行っています。家族全員で勝ったり負けたり大騒ぎしながら楽しんでいます。  今月はお母さんと小学校高学年以上の女の子対象に、新聞などでも掲載され、まもなく接種が始まる「子宮頸がんのワクチン」についてお話します。「子宮頸がん」と聞いて、「高齢の病気?」と思っている方はいませんか。数年前、代理母で話題になったタレントの向井亜紀さんは妊娠途中で子宮頸がんとわかり、妊娠継続を断念し、子宮全摘出後に代理出産でお子さんを授った出来事は記憶に新しいことだと思います。

 

Q1.子宮頸がんはどんな病気ですか?

A.1子宮頸がんは子宮の入り口にできるがんで、ヒトパピローマウイルスが原因です。

 子宮がんは子宮頸がんと子宮体がんに分けられ、子宮頸がんは子宮の入り口にできるがんです。20~30歳代の増加が問題になっており、日本では毎年1万5000人が罹患し、約2500人が亡くなっています。原因は他のがんとはまったく違って、ヒトパピローマというウイルスの感染によって起こります。ヒトパピローマウイルスは性交渉により感染し、多くの女性が一生に一度はかかるありふれたウイルスです。多くは一過性で自然に排除されますが、一部が持続感染をして、数年から十数年かけてがん化すると言われています。なお、性感染症や性病ととらえる方がいますが誤りです。

 

Q2. 子宮頸がんを予防できるワクチンって何ですか?

A2. 年内中にワクチンが接種できるようになります。

子宮頸がんはがんの中で唯一ワクチン接種により予防できる病気です。原因がヒトパピローマウイルスですので、このウイルスにかからないようにするワクチンを接種することで病気を予防できることになります。ワクチンは年内にも接種ができるようになり、予防効果が7~8割、性交渉前の10歳過ぎの女子に3回接種を予定しています。接種できる診療科としては、産婦人科はもちろん内科・小児科などが挙げられています。かかりつけの医療機関にぜひ相談してみてください。ただし、費用は3回接種で約4万円と高額になっています。高額ではすべての方に接種は難しく、ヒブワクチンと同様に早く公費負担で接種していただきたいと強く願っています。治療にはお金をかけるが予防にお金をかけない日本は先進国に比べて非常にお粗末です。もっともっとみんなで大きな声を上げていきましょう。

 

Q3. どうすればかからないで済みますか?

A3. ワクチン接種と定期的な検診が大事です。

がんが進行していると、出産が困難になる子宮全摘出になりますが、早めに発見できれば子宮頸部のみの切除だけの治療で妊娠も可能になります。病気の初めでは症状がまったくなく、病気が進行してきてはじめて自覚症状がでてくるので、7~8割の予防効果のあるワクチン接種とともに継続的な検診が重要になってきます。2006年の子宮がん検診は米国で82.6%・フランス74.9%に対し、日本は23.7%と非常に低い受診率です。初期ではほとんど自覚症状がないので、検診が大事であることがわかります。これからはじまるワクチンは100%発症を阻止できるのではないので、ワクチンをしてさらに定期的な検診がかかせません。検診は面倒だから恥ずかしいからと敬遠せず、ご自身の体のためにそして家族のためにも検診を受けましょう。

 

シリーズ~新型インフルエンザ2~

インフルエンザは冬に流行しますのでこれからが本番になってきます。冷静な対応が一番ですので落ち着いて行動してください。母乳で育てているお母さんがインフルエンザにかかり特効薬であるリレンザやタミフルを服用しても、母乳をやめる必要はありません。母乳は赤ちゃんを病気から守る免疫がたくさん入っているのでしっかりと飲ませてください。また、リレンザやタミフルの血中濃度はとても低く、赤ちゃんの腸管からの吸収もわずかのため、母乳を通しての赤ちゃんの影響はほどんとないと言われています。新型インフルエンザワクチンは11月から妊婦さん、ぜんそくなどの基礎疾患のある方から順次始まります。例年になく、希望者も多いと思われます。予防接種の予約はお早めに。

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