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院長コラム

 今年は短い梅雨のようで、あっという間に夏がきて猛暑日の連続となっています。皆さん熱中症に気をつけながら夏を楽しみましょう。先月、当クリニックに隣接するこども園の夏祭りに園医として参加しました。おやじの会が主催した絵本の読み聞かせの1人として、私も親子に読み聞かせをさせてもらいました。隣接するこども園では「令和6年度子どもの読書活動文部科学大臣表彰」を受賞しており、本との触れ合いを大切にしています。私が絵本を読み始めると、あら不思議、たどたどしく読んでいる話を子どもたちが真剣に聞いてくれました。読み手も絵本の魔力に魅了されました。

 今月は参議院選挙が実施予定となっています。私たち1人1人の思いを社会に反映する場として選挙があります。皆さんも社会の不満(コメ問題、物価高など)を感じていると思います。投票する人がいないと諦めずに、悪くない人に投票してください。投票する人たちに政治家は耳を傾けます。私も自分の子どもたち、クリニックスタッフへ投票を呼びかけるつもりです。

 5月末、山梨県障害児(者)地域療育等支援事業の研修会で県内の保育士・保健師・教師・養護教諭などを対象に「発達や行動が気になる子の理解を学ぶ」という題で講演をさせていただきました。大勢の聴講があり、関心が高い分野であることを再認識させられました。話の中で発達障害のお子さんは発達の凸凹に配慮をしながら、早期発見・早期支援、そして2次障害の予防が大切であることを伝えました。障害を知る中で、発達障害の認知が高まっていますが、「境界知能」についてはまだ認知がされているとは言えません。

今月はみなさんに「境界知能」についてお話します。

 

境界知能って

知能指数(IQ)85~115が平均的、70を下回ると知的障害にあたるとされています。「境界知能」はIQ70~85に位置する人たちのことで、病気(病名)として扱われてないのですが、日常生活に困難を抱えている人が少なくありません。日本の人口の約14%(約1700万人)、7人に1人います。知的障害の方々は手厚い支援が受けられていますが、「境界知能」の方々は社会的な支援が乏しく、日常生活に困難を抱えていることが社会問題になっています。

境界知能に詳しい古荘純一医師は「人によって差はあるが、境界知能の人の特性は数的な処理が苦手・作業スピードが遅い・物事の理解が表面的・適切なコミュニケーションが苦手などあります。一見、その困難が周囲の人からはわかりにくいため、理解につながらず、困難な状況に陥っています。ひきこもりや不登校などになっている人もいる。」と話をしています。

さらに昨秋、NHK首都圏ナビで取材された境界知能の女性は中学時代、毎日3~4時間勉強し続けても成績が伸びず、教師からは「努力不足ではないか」と言われ、本人は「全部自分が悪い。悲しかったし、悔しかったし、情けなかった。」と思っていたそうです。


「ケーキの切れない非行少年たち」を読んで

 著者である宮口幸治は児童精神科医で、医療少年院での勤務で多くの非行少年たちと出会った経験がつづられています。その非行少年たちは認知力が弱く、「ケーキを等分に切る」ことすら出来ない場合が多くいるそうです。非行少年の多くが境界知能に該当し、生育歴を調べると、小2くらいから勉強についていけず、友達から馬鹿にされたり、イジメに遭ったり、先生から不真面目だと思われたり、家庭から虐待を受けていたりします。これが2次障害と言われるものです。そして学校に行かなくなり、暴力や万引きなどの問題行動を起こし始めていきます。困っている子どもがいたら、早期発見と支援が大切で支援するために著者らが立ち上げた「コグトレ研究会」が参考になるようです。

私自身は「境界知能」について日々の診療で意識していたとは言えないのが現状でした。気づきづらい「境界知能」のお子さんは自分から困っていると訴えることはありませんので、学校関係者をはじめとした私たち大人が気づき支援していかなければならないと思います。昨今、発達障害は多くの方々が知るようになり、理解が進んでいますが、知的障害と平均的な方々との間に位置する支援が乏しい「境界知能」の人々の生きづらさについて知るきっかけになれば幸いです。

 

参考文献

境界知能とは 特徴は 検査でIQ81と判明した女性 仕事や学習で長年悩むも“支援がない”NHK首都圏ナビ

https://www.nhk.or.jp/shutoken/articles/101/013/68/(参照日2025年6月18日)

宮口幸治(2019)『ケーキの切れない非行少年たち』新潮社.

 今月は梅雨もあり、祭日もないので一月が長く感じますね。

子ども達は学校・園での疲れもたまってくる頃かもしれません。お子さんの訴えには耳を傾け、学校・園でお子さんの困り感があった場合はご両親がお子さんの声を汲み取り、時には先生に伝えることで子どもの不安な気持ちが和らぐことがあります。ぜひ向き合ってみて下さい。

 3年前にうちの庭にサクランボの木を植えました。2年前は実ができる前にアオムシに葉を全部食べられてしまいました。今年は消毒をして、なんと初めてたくさんの実が生りました。とてもうれしい気持ちで明日にでも味見しようと考えていたある日、実をカラスにすべて取られていました。サクランボ農家の方に聞いて来年はネットをかけて対策しようと考えています。

 我が家は娘が中学生になり、帰りは部活が終わって午後6時過ぎに帰宅、週2回で朝練もあり、小学校の時と様変わりの生活です。娘は学校にいる時間が長くなり、夫婦2人でいる時間も多くなってきました。少ないながらも子どもと接する時間を大切にしたいと思います。

 先月、東大前駅刺傷事件がありました。43歳男の動機が子どもの心身が耐えられる限度を越えて教育を強制する「教育虐待」が原因で、罪を犯したと供述しています。教育熱心な親の下で中学時代に不登校になって苦労したこと・小学生の頃、テストの点数が悪いと親に厳しく叱責されたようです。今月は「教育虐待」について皆さんと考えていきたいと思います。

 

教育虐待いろいろ

 「東大前駅刺傷事件」以外にも、2018年滋賀県守山市で母親が国公立大医学部への進学にこだわり、約9年間浪人させたことで元看護師の長女が母親を殺害した「滋賀医科大学生母親殺害事件」、2023年には九州大学に通う19歳の大学生が佐賀県鳥栖市の実家で両親を殺害した事件がありました。きっかけは幼少期から父親による心理的、身体的な虐待を受けており、事件4日前に大学の成績が下がったことで1~2時間ほど正座させられ叱責されたことでした。

当クリニックでも、子どもたちが「頭痛」「腹痛」などの症状を訴えるケースがあります。胃腸炎や感冒などが否定された場合、学校の悩みもありますが、ご両親が教育熱心なあまり、子どもたちに必要以上の勉強を期待する場合があります。その時はご両親に勉強時間を減らすようにお伝えたりします。結果子どもたちの訴えが改善することがあります。事件にまでならない場合でも、「教育虐待」に近いことは身近にあります。親がよかれと思っていても、子どもは深く傷つき、自信が低下し、うつや不安などの精神症状、体調不良を認める場合があります。勉強だけでなく、スポーツや音楽もあてはまります。

 

教育虐待の背景と防止策

2024年3月13日、NHKクローズアップ現代「教育虐待、その教育は誰のため?」の番組の中で一般社団法人ジェイス代表理事武田信子さんの話がありました。「教育熱心」でありたいと思いながらも「教育虐待」につながることがある。「教育熱心」である場合は、親は子どもをそもそも別の人格だと考え、子どもが幸せな状態かを第一に考えて、無理ならば別の道を考えます。「教育虐待」は自分の子どもは自分の作品と思い、子どもと自分の成功が大切でその道を良かれと信じて疑わないようになる。教育虐待の背景には「親の不全感(親の理想を実現できていない)」・「子どもの人生は親の責任」・「競争的な社会」があります。そのため、親の子どもへの向き合い方として「子どもを尊重する」・「対話できる関係作り」が大切だと述べています。子どもの気持ちに寄り添い、親の言う通りにするのではなく「それで、どう思っているの?」というやり取りをする。このような対話をずっと繰り返すことで、親が決定しないで子どもを尊重できる。このやり取りを繰り返していくと信頼関係が作られると言っています。

 

私の経験から

私自身も子どもに教育虐待に近い?ことをしたことがあります。子どもが中学生の時、暴力はしませんでしたが、言葉で強く「勉強しろ!」と言ったことが何度か(もしかしてもっとかも?)あります。そうすると家庭が冷え切りました。親として子どもに過度の期待をしてしまったことが自分自身の反省点です。その経験から学んだのは「子どもは自分とは別人である」「子どもは学校などで勉強するように言われている」ことです。親ができることは、見守って応援してあげることだけでよいことを知りました。中1の娘にはそれだけを心がけています。親は子どもに尽くすことだけが責務ではありません。子どもが成人になってもよい親子関係を保つことで、お互い助け合う関係もできます。やがて子どもは老いていく親をサポートしてくれるでしょう。親業を楽しみましょう。

 桜も散り、緑が溢れる季節になりました。皆様、新生活に慣れましたか?

うちの娘は先月、中学生となりました。ランドセルを背負っていた小学生とは変わり制服姿をみると、大人への階段を一歩ずつ上っているなと感じています。園・学校ではクラス替え、担任の先生が変わり、お子さんたちは環境が変わって疲れも溜まっていることでしょう。ご自宅では数分でもいいので「今日、学校どうだったの?」と声かけをお願いします。

3月20日、サッカー日本代表の試合を初めて応援に行ってきました。この試合でバーレーンに2-0で勝ち、ワールドカップ本大会出場を決めました。学生時代サッカー部だったこともあり、昔を回顧しながら、最高峰の試合を観ることができ、感無量でした。

 TBS系日曜劇場「御上先生」の放送が3月終了しました。日本教育に蔓延する腐った権力へ立ち向かう大逆転教育再生ストーリーで、クラス担任である御上先生が生徒と一緒に信頼関係を築き権力と戦う姿は、フィクションではありますが、気持ちがすっきりしました。実際の教育現場では、公立教員の処遇改善や公立中学校の部活の外部委託など、教員の働き方を改善する取り組みは始まっていますが、教師の成り手が少ないのが現状です。高校無授業料無償化が決まりそうで家庭の経済事情にとっては歓迎できますが、教師自身の働き方改革も今以上に進めて、先生方の環境をよくすることで、子どもたちがよりよい教育を受けて欲しいと願うばかりです。

 昨今、全国的に百日咳感染者数の報告が増加しており、既に昨年を超える報告数となっています。県内の百日咳の感染者数もコロナ禍で患者数が年0人、令和6年8人と増加、今年に入って、4月17日時点で15人と昨年を超えています。今月は今後さらなる患者数の増加が懸念される百日咳についてお伝えします。

百日咳とは

 百日咳は百日咳菌が原因で、その名の通り百日ぐらい咳が長引くのが特徴で、特有のけいれん性の咳発作が起こります。母親からの免疫が充分でなく、乳幼児早期からかかる可能性があり、特にワクチン未接種の乳児がかかると重症化し死に至ることもあります。

症状は

 経過は大きく3つに分けられ、1)カタル期(約2週間):通常7~10日間程度の潜伏期を経て、普通のかぜ症状で始まり、次第に咳の回数が増えて程度も激しく続きます。2)痙咳期(約2~3週間):次第に特徴あるけいれん性の咳があります。これは「コン、コン、コン、ヒュー」みたいな感じで吐きそうなくらい強い咳を繰り返します。嘔吐を伴うことがあり、発熱はあまり出ません。3)回復期(2,3週~):激しい咳は次第に減り、2~3週間で認められなくなりますが、その後も忘れた頃に発作性の咳がでます。全経過は約2~3か月で回復します。成人の百日咳では咳が長期に続きますが、典型的な発作性の咳がないため、診断が見逃される場合があります。これからは長引く咳があった場合、百日咳を疑うことが大切です。

診断は

 診断は菌培養・血液検査・遺伝子検査があります。菌培養が非常に適しているが、保菌量が多い乳児が検査をしても菌分離成功率は60%以下と低く、ワクチン既接種者や菌量の低い青年・成人では菌分離が困難で、カタル期後半が採取ベストな時期ですが、痙咳期になると菌がなくなってしまっており、実際は検査がしづらいのが現状です。このため、遺伝子検査もしくは血液検査による抗体価を測定し診断をすることになります。

治療と予防は

 治療はマクロライド系抗菌薬と咳止め・去痰剤・気管支拡張剤などが使用されます。感染経路は飛沫・接触感染であるため、通常の手洗い・うがいなどの感染対策をしてください。ただ、百日咳は感染力が強い病気で、ワクチン接種による予防が最も効果があります。

予防は百日咳ワクチンを接種することが大切です。百日咳ワクチンは0歳代に3回、1歳を超えて1回の追加接種を計4回接種しますが、それ以降は設定がありません。百日咳ワクチンの免疫持続期間は4~12年とされ、抗体が減少してくる幼児期から学童期に感染の増加がみられます。任意接種となりますが、就学前に3種混合ワクチンと11~12歳に行われる2種混合ワクチン(定期接種)の代わりに百日咳ワクチンを含む3種混合ワクチンを日本小児科学会では推奨しています。さらにこれらの任意接種を定期接種化されることを望んでいます。

生後2か月未満では百日咳に対する免疫がないので、生後2か月になったら百日咳ワクチンが含まれている5種混合ワクチンを早めに接種しましょう。

 

参考文献

JIHS感染症情報提供サイト 百日咳

https://id-info.jihs.go.jp/diseases/ha/pertussis/010/pertussis.html

日本小児科学会.百日咳患者数の増加およびマクロライド耐性株の分離頻度増加について

https://www.jpeds.or.jp/uploads/files/20250402_hyakunitizeki1.pdf

百日せきワクチンファクトシート

https://www.mhlw.go.jp/file/05-Shingikai-10601000-Daijinkanboukouseikagakuka-Kouseikagakuka/0000184910.pdf

やまなし感染症ポータルサイト

https://www.pref.yamanashi.jp/kansensho/hyakunichizeki.html

 

 やっと春が来ました。私は寒いのは苦手なのでとてもうれしい季節が到来、気持ちも上向きになります。先月、妻と2人で「35年目のラブレター」という映画を観てきました。実話に基づくもので各メディアから取り上げられ映画化されました。過酷な幼少時代を過ごし、読み書きができないまま大人になってしまった主人公の保、文字が書けないこと以外どこにでもいる夫婦の優しい物語です。読み書きができないことが日常生活の生きづらさがあった保が定年退職後、最愛の妻にこれまでの感謝を込めたラブレターを書きたいと夜間中学に通う、、、。私たち夫婦も結婚して30年経ち、重なる思いもあり、涙なしでは観れませんでした。子育て中は夫婦関係を見つめ直すことがあまりないかもしれませんが、たまには夫婦2人でこんな映画を観たりして夫婦の在り方を考える時間が持つのはどうでしょうか。

2月20日、山梨県立文学館で「山梨県病児保育事業の発展のために」というテーマで病児保育事業を担う県や市町村担当者や病児保育室を担当する保育士・看護師等に対して講演をさせていただき、その後参加者でグループディスカッションをしました。病児保育事業について県と市町村の担当者と各病児保育施設運営側が集って理解を深める機会が今までなかったので、非常によい会となりました。病児保育室について今まで以上に県民への広報を努めていくことや施設側の悩みを県や市町村にわかってもらえました。

 今月から65歳を対象に「帯状疱疹ワクチン」が定期接種になることが決まりましたので、皆さんが知っていただき、ご家族に65歳以上の対象者がいましたが、このワクチンの接種をお勧めしてください。

帯状疱疹とは

 水痘・帯状疱疹ウイルスの感染に伴って水痘(みずぼうそう)にかかり、治った後もウイルスが体内(神経節)に潜伏し、過労やストレスなどで免疫が低下すると、再び活性化し帯状疱疹を発症します。発症すると体の片側に水疱を伴う紅斑が帯状に広がります。症状は痛みを伴うことが多く、3~4週間ほど続きます。治療は抗ヘルペスウイルス薬を使用します。かかりやすい年代は50歳代以降で増え、70歳代がピーク、80歳までに約3人に1人が経験しまう。成人の90%以上は水痘・帯状疱疹ウイルスが体内に潜伏しているのでほとんどの人が帯状疱疹になる可能性があります。

 帯状疱疹を発症した場合、接触感染によって水痘にかかる可能性があるので、水痘ワクチンを接種していない乳児などとの接触は避けてください。

 

帯状疱疹後の合併症にご用心

 帯状疱疹の最も多い合併症として「帯状疱疹後神経痛」があり、これは皮膚症状が治った後にも数か月から数年にかけて痛みが続きます。「焼けるような」「締め付けるような」持続性の痛みや、「ズキンズキンとする」痛みを多く訴え、睡眠や日常生活に影響します。帯状疱疹にかかった10~50%かかると言われています。

 

帯状疱疹ワクチンは2種類

 今月から帯状疱疹ワクチンが定期接種化されました。このワクチンで帯状疱疹やその合併症を予防できます。対象年齢は「65歳」の人が対象で、費用の一部が公費で助成されます。2025年度から2029年度までの5年間の経過措置として、その年度内に70、75、80、85、90、95、100歳となる方も対象で、100歳以上の方は2025年度に限ります。

ワクチンは「生ワクチン」と「乾燥組替え帯状疱疹ワクチン」の2種類があります。生ワクチンは接種が1回、予防効果が接種後5年で効果が4割続き、主な副反応は接種部位の皮膚の発赤が44%にみられます。乾燥組替え帯状疱疹ワクチンは接種が2回、予防効果が接種後10年で効果が7割続き、主な副反応は接種部位の腫れが89%です。現在(3月20日時点)、個人の負担額が確定してないため、お住いの市町村に確認していただくことをお勧めします。どちらにすべきか迷われる場合はかかりつけ医に相談をしてください。ぜひ前向きに接種していただくことをお勧めします。家族の中に対象者がいましたら、周囲の方々が勧めていただければ幸いです。

最後に、2015年以降、子どもたちへの水痘ワクチンが定期接種化されました。これによって子どもたちが水痘にかからなくなってきています。水痘の流行がなくなることで、自然感染による免疫の増強(ブースター)が受けられなくなり、結果的に帯状疱疹の患者数が増加することが予想されており、帯状疱疹ワクチンの重症性が増しています。

 

参考文献

帯状疱疹ワクチンファクトシート第2版(令和6年6月20日改訂)国立感染症研究所 https://www.wic-net.com/material/static/00015256/00015256.pdf

 今月から少しずつ植物や虫たちが息を吹き返す季節ですね。うちの娘が長い小学校生活を終え、来月から中学生になります。子どもの成長は早いもので嬉しくもあり、ちょっぴり寂しさも感じます。最近、仕事関係の仲間から声をかけられ、大学時代部活動としてやっていた硬式テニスを月1回やるようになりました。30~40歳代は仕事・家庭生活が多忙でテニスと無縁でしたが、子育ても落ち着き顔を出せるようになりました。テニスを通じて仲間が増え、体を動かすので健康にもよいですね。皆様も子どもが大きくなってきたら、少しずつご自身のための時間を作り、うまく子離れをしていってください。

 薬物依存というと覚せい剤や大麻をイメージしますが、最近は薬局やドラッグストアなどで売っている市販薬を乱用する若者が急増しています。今月は昨今の社会問題になっている市販薬の過剰摂取(オーバードーズ、OD)についてお話します。

 

オーバードーズとは

 医薬品を決められた量を超えてたくさん飲んでしまうことを指して、「オーバードーズ」と言われています。特に最近、かぜ薬や咳止め薬などをかぜや咳の症状を抑えるためではなく、感覚や気持ちに変化を起こすために大量に服用することを指して、「オーバードーズ(OD)する」などと言われています。

 薬は肝臓や腎臓で分解され無毒化(代謝)されるので、たくさん飲んでしまうと、身体に大きなダメージを与えてしまい、死に至ることもあります。ODにより意識がもうろうとしたり、呼吸が苦しくなったりして救急搬送される例が各地で報告されています。ODは心と体を傷つける、危険な行為です。

2022年、国立精神・神経医療研究センターによる調査では、全国の精神科医療施設で薬物依存症の治療を受けた10代患者のうち、市販薬を主に使用していた患者は全体の65.2%を占めています。ちなみに2014年の同様の調査では、市販薬を使用していた患者の治療は0%でした。ODが若年層に急速に浸透してきていることが分かります。

 

高校生は約60人に1人OD経験あり

 国立精神・神経医療研究センターが2021年に実施した「薬物使用と生活に関する全国高校生調査」によると、「過去1年間に市販薬を乱用した経験がある」と答えた生徒が約60人に1人の割合(約1.6%)でいることがわかりました。

この調査では市販薬乱用の経験を持つ高校生は非経験者に比べて、睡眠時間が短い・朝食の摂食頻度が低い・家族全員での夕食頻度が低い・大人不在で過ごす時間が長い・親しく遊べる友人や相談ができる友人が少ない・悩み事があっても親(特に母親)に相談しない・インターネットの長時間使用(1日6時間以上)の割合が高い結果でした。市販薬乱用の予防や支援をしていくためには、こうした生活上の特徴を把握していくことが重要と考えられています。背景に社会的孤立・生きづらさがあります。

 

オーバードーズをしたくなったら

 つらい気持ちや、嫌なことがあったり、なんだかもやもやしていたり・・・そんな気持ちや生きづらさをODで変えられると思ったら・・・そんな時は危険なODより、つらい気持ちや嫌なことを誰かに話してみたり、困っていることを相談してみたりすると、そんな状況が少し変わるかもしれません。

 身近な友達や先生や家族にはちょっと話しづらい時は専門家が話を聞いてくれる相談窓口(精神保健福祉センターなど)もあります。もちろん、秘密は絶対に守られます。誰かに相談するのは、勇気がいるかもしれません。そんなに難しく考えなくても、ただ誰かとなんでもないお話をするだけで、こころが少し晴れることもあります。

 

ご家族や支える皆さんへ

 友達や家族がODしていることに気づいたら、力になってあげてください。何をしてあげたらいいかわからなかったら、専門家に相談できる窓口を紹介することも支援の一つです。相談はODをしている本人でなくてもできます。本人に対しては責めたり、無理やりやめさせようとしないでください。それよりも、本人がODをしないといけないくらい「辛い」ことを受け止め、まずは本人の話に耳を傾けてあげてください。それだけで本人の気持ちが落ち着くこともあります。「辛いんだね」「大変なんだね」などと声をかえてみてください。家族だけで抱え込むのではなく、専門医療機関や精神保健福祉センターなどに相談をしてください。

 

参考文献

厚生労働省ホームページ 一般用医薬品の乱用(オーバードーズ)について

薬物使用と生活に関する全国高校生調査(2021) 厚生労働省

https://www.ncnp.go.jp/nimh/yakubutsu/report/pdf/highschool2021_ver2.pdf

全国の精神科医療施設における薬物関連精神疾患の実態調査(2022、国立精神医療研究センター)

https://www.ncnp.go.jp/nimh/yakubutsu/report/pdf/J_NMHS_2022.pdf

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