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院長コラム

令和4年10月号 (Vol.209)
起立性調節障害について

2022/10/01(更新日)

 先月は多くの小学校で運動会が行われました。長引くコロナ禍により学校でのお子さんの様子を知る機会が少ないため、久しぶりにお子さんの成長を感じたのではないかと思います。コロナ対策も少しずつ緩和しておりますが、まだ生活の制限が多々あります。コロナ対応を意識しすぎることにより、自殺者数の増加や出生数の減少など負の側面が表出しており、ますます生きづらい社会になってきているように感じています。合わせて自粛疲れで、人間関係がギスギスしてしまい、小さなトラブルが様々な場で見受けられます。政治家の方には専門家の意見を参考に自粛解除の流れを加速していただけたらと思っています。子どもたちの健全な発育を育むためにも是非検討していただきたいです。

 今月は思春期に起こりやすく、自律神経の働きが悪くなることによって生じる起立性調節障害についてお話します。

 

起立性調節障害とは

 自律神経は意思に関係なく体を調整し、体温・呼吸・発汗・消化など生命の維持に必要な働きをしており、交感神経と副交感神経に分かれています。この2つの神経がバランスを保って体を支えています。起立性調節障害とはこの自律神経の働きが悪くなり、起立時に体や脳への血流が低下する病気です。症状としては朝起きることができない・食欲不振・全身倦怠感・頭痛・立っていると気分が悪くなる等があります。症状は午前中に強く現れて、午後からは体調が回復します。夜には元気になり、目がさえて眠れません。症状の程度が日・天候によって異なり、一般的には春先から夏に悪くなります。小学校の約5%、中学生の約10%の頻度で見られ、男女比は1:1.5~2、好発年齢は10~16歳、不登校の3~4割は起立性調節障害が占めていると言われています。

 

診断と治療

 立ちくらみ・めまい・立っていると気持ち悪くなる・朝起きられないなどの症状をいくつ満たすかという診断基準で、血液・尿検査などで他の病気を除外した上で診断をしていきます。さらに、寝ているときと急に起こした時の血圧・心拍数を計測する『新起立試験』を用いて4つのサブタイプを分類しています。

 治療でまず大切なことは、本人のさぼりや怠けが原因でないことを親や教師が理解することです。朝起きられないといった症状があるので、ついつい気合でなおそうと思いがちですが、自律神経の乱れから起こる病気であることを理解していただきたいです。

まずは日常生活を見直すことから始めます。早寝早起きのリズムを正しくし、だるくても日中は横にしないようにします。朝起きるときは頭を下げたまま歩き始めてください。頭を上げて立ち上がると脳血流が低下して気分が悪くなります。立ち上がる時(入浴時など)には急に立ち上がらずに30秒ほどかけてゆっくりと起立してください。朝起きられない場合は声掛けをしながら、カーテンを開けて朝日を入れてください。運動は散歩などの軽いものでもいいので、1日15~30分程度はしましょう。食事は塩分(1日10~12g/日)を多く摂取し、循環血液量を増やすために水分は最低1.5リットル必要です。適切に行うことで、軽症例では数か月以内で改善します。生活を見直すことをしてもよくならない場合は昇圧薬などの薬物療法も加えて対応していきます。

 

気になる場合は早めに医療機関へ

学校側の理解も大切で、起立性調節障害はよくある病気であることと捉えて、午後からの登校も快く受け入れていただけると回復が早くなります。

 実際の例をお話します。そのお子さんは今まで、友達とのトラブルもなく、毎日、楽しく学校へ行けていましたが、ある日を契機に朝起きることができず、母が何度も、起こしてもベッドから起きることができませんでした。ただ、昼過ぎから動けるようになり、夜にはすっかりいつも通りの元気さになっていました。学校も休みがちになったことで、私のクリニックに受診しました。他の病気を除外し、診断基準から起立性調節障害と診断、上記に述べた生活の見直しをお願いしたところ、徐々に症状は回復し、1か月程度でいつも通りに学校へ行けるようになりました。このケースは軽症だと思われます。不登校が長期間に及ぶと、体をあまり動かしていないため、症状もすぐに軽快しません。親や学校側が本人の怠けと思い込んでいると、解決が遠のいてしまいます。気になる場合は医療機関を早めに受診をして、適切な方法で症状と向き合っていくことをお勧めします。

 

参考文献

小児心身医学会ガイドライン集 南江堂

理化学研究所ホームページ

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