令和8年3月号(Vol.250) 子どもの性被害を考えよう!後編
ようやく春がやってきますね。
私は健康維持にマラソンをしています。昨秋から2~3km走ると膝が痛くなる状況が続き、ネットで調べると靭帯の炎症が疑われたので、筋力を鍛え、ウォーミングアップ等の対処法をしっかりとしたところ、膝の痛みがなくなってきました。老い始めている体を労わりながら、無理せず健康維持に取り組んでいきたいと思います。
先月は子どもの性被害についてお伝えしました。ここ1か月間の報道だけでも、「学童クラブの支援員だった保育士の男が泊まり保育で就寝中の男子児童にわいせつな行為をした疑いで逮捕」「埼玉県の公立高校内で男子生徒の着替えを盗撮したとして同校教諭を逮捕」という記事がありました。被害対象が女の子だけではないことがわかります。今月も子どもの性被害についてお伝えします。
小児性愛障害(ペドフィリア)って?
小児性愛障害は精神疾患の病名です。アメリカ精神医学会による『精神疾患の診断・統計マニュアル(DSM-5)』では診断基準として、「思春期前の小児を対象とする性的興奮をもたらす反復的な強い空想、衝動、または行動が6か月以上にわたり認められる」「本人が衝動を行動化しているか、その衝動および空想によって著しい苦痛または機能障害が生じている・そのような衝動または行動に関わる苦痛の経験は診断の要件とされていない」「本人が16歳以上でかつ空想または行動の対象である小児より5歳以上年長である」と記されています。大半は男性、フィンランドやドイツで行われた大規模調査では有病率1%でした。
2011年、熊本市で当時3歳の女児が家族と一緒に買い物に来た女児を障碍者用トイレに連れ込んだ後、女児に対してわいせつ行為を行い、口を塞いだ状態で首を絞めて殺害した痛ましい事件がありました。この事件では父親が女児1人でトイレに行かせて、犯人が後をついて犯行に至りました。250人もの加害者と対面してきた斎藤章佳さんによると、外見は「特徴がない」のが特徴だそうです。どこにでも存在し、子どもに近づいてもあやしまれにくい人物像です。アメリカの児童保護サービス機関の全国データによると、小児被害のうち81%が子どもと加害者が1対1になったときに起きていたそうです。子どもがひとりきりになるチャンスをうかがっていることがわかります。1対1にならなければ起きづらいとも言えます。
グルーミング(手なずける)で近づく
外見では見分けられない小児加害者を行動で見分ける必要があります。加害者に共通する特徴的な行動として、入念な下調べのもと子どもに接触し、子どもに接する職業や役割に就いてきます。グルーミングとは性加害を目的に親切を装って子どもに近づき、信頼や依存を高めて油断させていくことです。子どもは心身が発達段階にあり、人間関係の経験値も少なく判断能力が充分に身についていないので、優しくしてくれたり、お菓子をくれたりする大人に近づいていきます。徐々に接近し、肩や太ももなど一見無害な場所へのタッチからはじめて、次第にあからさまな場所を触ってきます。また、SNSやゲームなどのオンラインを通して、相談相手になったり、リアルに会うことを求めたり、下着姿や裸の写真を撮って送るように要求したりします。グルーミングの恐ろしい所は、被害を被害と思えず、発覚しときに子どもが加害者のことを「悪く言わないで!」と言い、「加害者に迷惑がかかるから」と口をつぐみ加害者をかばうことです。
小児性暴力の撲滅のために
子どもたちは未熟なので、親・園・学校だけでなく、社会全体で子どもの性暴力を守っていく必要があります。対象は男児、女児関係なく、年齢も乳児から加害されます。診察中に医師と子どもだけの1対1の空間をつくらない・学習塾などでは保護者同伴でなければ面談をしない・面談をするときには必ず講師やスタッフをもう1名同席させるなどで密室を防ぐことも大切です。
子どもたちへの性教育は小児性暴力の予防につながります。日本の性教育は世界水準を大きく下回っており、世界標準の「包括的性教育」を導入していくことが望ましいと言われています。山梨県内では、県医師会の「性(生)教育講師派遣」事業で産婦人科医らが講師となって、小中高校生に講演を行っています。子どもたちに正しい知識が普及することを願っています。
さらに、加害者が再犯させないための認知行動療法などの治療プログラムを導入することも必要です。また、子どもと接する職場(学校・保育所など)で働く人の性犯罪歴の有無を雇用主がチェックし、犯罪があれば就労を制限する「日本版DBS」が導入される予定になっています。少しずつではありますが、子どもたちを性犯罪から守る環境が整えつつあります。未来ある子どもたちを守るために、一層の医療・教育・法的整備を含めた社会全体の取り組みが求められていると感じています。
参考文献
今西洋介 小児科医「ふらいと先生」が教える みんなで守る子ども性被害 集英社 2024年













