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院長コラム

令和3年6月号(vol.193)
学校給食を考える

2021/06/01(更新日)

コロナがなかなか落ち着かない中、医療従事者と高齢者が対象で新型コロナワクチンの接種が始まりました。私も先月、1回目の接種をしました。接種した当日は痛みもほとんどありませんでしたが、翌日、接種した部位の痛みがあり、2日後にはその痛みもなくなりました。2回目の接種の方が副反応は強くでるそうで気になっています。

5月15日、厚労省から新型コロナウイルスに感染した子どもたち(1662例)の詳細が発表されました。これによると、約半数が無症状で、9割が治療することなく回復、感染経路は7割が家庭内感染、そのうち半数が父親からの感染で、変異株でも同様な傾向であったという結果でした。安心は禁物ですが、子どもに感染させないようにするには、私たち親が感染に気をつけることが大切だと考えられます。

コロナ禍も加わり腹痛・頭痛などの症状があり、学校に行きたくないと訴え、うちのクリニックに相談に来るケースが増えています。学校に行きたくない理由の一つとして「給食時間の悩み」があります。今月はこの給食の悩みについて取り上げてみたいと思います。

 

学校給食について

平成31年3月文科省からに発表された「食に関する指導の手引き」によると、学校給食とは児童生徒の心身の健全な発達や食に関する正しい理解と適切な判断力を養う上で重要な役割を果たすものであり、さらに給食時間は児童生徒が友達と担任などと和やかで楽しく会食する時間で、ゆとりある落ち着いた雰囲気で食事ができるように、日頃から安心して食べられる環境を整えることが大切であると書かれています。つまり、給食は「楽しく食べて、食事の大切さを学ぶ場」です。

 

あるお子さんのケース

 楽しいはずの給食が、お子さんによっては嫌な時間に変わる場合もあります。先月末、クリニックに相談に来られた小1の女子の話です。学校に行く日になると朝から腹痛が続いていましたが、何とか登校をしていたそうですが、とうとう学校に行けなくなり、受診に至りました。話をよく聞くと、給食を全部食べなければならず負担になっていることがわかりました。私は母に「本人が食べられる分だけお皿に盛ってもらう」ように学校に伝えるように話をしたところ、本人も安心したようで笑顔で帰りました。その後、学校側も快く量を減らし対応していただき、以後腹痛もなく学校へ行けています。このようなケースは珍しいことではなく、度々経験します。

 

食べることを強制せず、楽しい時間に

給食時間の気になることは、教師からクラス全体で給食を残さないように強制されたり、自分の量が食べ終わるまで給食後も居残って食べなければならないことがあります。担任が変わると、居残り食べずに済んでホッとしたことも聞きました。お子さんは体格などの個人差があり、食べる量が違うので、行き過ぎた指導は子どもたちへの負担となります。あまり食べられない人は盛る量を少なくしてもらう方法が得策です。子どもから給食の様子の話を聞き、ご両親から先生に伝えてもらえるとお子さんも安心して学校生活を送ることができます。

また、発達障害のお子さんや発達に特性があるお子さんの中には触覚や嗅覚などの感覚の過敏さで偏食がみられる場合があるため、特性を受け入れ配慮していただけたらありがたいです。また、食事量が極端に少ない場合や体重減少もみられる場合は摂食障害の可能性もあります。この場合は医療機関に相談をすることが大切です。

クラスへ配膳された給食を食べ残さないように指導することは大切ですが、強制になってはいけないので、毎日食べ残してしまうなら、クラスに割り当てる量全体を減らしてもらうことは難しいのでしょうか。無理なく食べ切ることを学校全体で考えてもらえるとありがたいです。無理に食べさせると、嘔吐・腹痛から発展し、不登校・摂食障害・心的外傷後ストレス障害(PTSD)になる場合もあります。逆によく食べるお子さんは「子どもの貧困」があるかもしれません。子どもの貧困は見えづらいと言われます。給食の時間等を通じて担任の先生が気づき配慮していただけたら幸いです。

給食は和やかで楽しい時間であることを忘れてはならないと思います。一方で、コロナ禍にある給食時間は和やかで楽しい雰囲気を作ることが難しいかもしれません。集団生活の中で唯一マスクを外すことができる時間に、先生が和やかに美味しそうな表情で食事をしていることは、子どもたちに安心感を与えることになります。

 

参考文献

食に関する指導の手引-第二次改訂版-(平成31年3月):文部科学省 (mext.go.jp)

新型コロナウイルスの小児への 影響の解明のための研究

https://www.mhlw.go.jp/content/11920000/000779606.pdf

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