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院長コラム

平成28年1月号(Vol.128)
化血研のワクチン不正問題

2016/01/01(更新日)

あけましておめでとうございます。ちびっこぷれすの連載も早10年が経ちました。今年も最新の子どもの医療情報についてお伝えできるよう努めていきたいと思っております。皆さんは今年どんな年にしたいですか?私は「健康」な一年にしたいと考えています。若い時はそんなに意識していなかったのですが、年々自分の健康について考えるようになったのがきっかけです。体とこころの両面が健康でなければ、仕事で患者さんにもよい対応ができません。健康を維持するための体力づくりとして数年前からランニングをしています。月に100kmを目標に健康を維持したいです。合わせてわがままな私を受け入れてくれる妻にも感謝しながら家族を大事にする良き1年にしたいと思います。

今月は診察時によく質問されるようになり、関心が高くなってきた「化血研の不正問題」について詳しくお話しします。先月、100ページ以上にも及ぶ第三者委員会の報告書が発表され、血液製剤の不正からワクチン、さらに人だけでなく動物用ワクチンまで化血研の製品に製造手順の不正が見つかりました。ここ数年で新しいワクチンが誕生し明るい話題が多かったのですが、今回のワクチン不正問題については残念だというよりも憤りを感じます。

 

不正の詳細

化学及血清療法研究所(化血研)は血液製剤やワクチンを製造している会社です。昨年6月に血液製剤で承認された製造方法と異なる製造をしていることがわかり、ワクチンにも不正が見つかりました。化血研のワクチンはインフルエンザ・4種混合・日本脳炎・B型肝炎・A型肝炎ワクチンを製造、国内でも大きなシェアがあり、今回の騒動でワクチン不足が全国的に起きています。

 第三者委員会の報告書によると、40年前から不正があり、国側の検査に備え、1995年からは虚偽の製造記録を作成するなどの隠蔽工作を重ねて、当時の製造部門の部長の指示のもと、組織的に進められていました。まず、2種類の製造記録を作成し実際の製造記録は明朝体で記録しました。一方、国の査察用はゴシック体にして区別していました。また、過去の製造記録を書き直す際には、筆跡の似た職員にサインをさせて古い書類に見せかけるため、紙を紫外線で焼くなど手の込んだ改ざんが行われていたそうです。記者が化血研の理事長になぜ不正を改善しなかったのかと問いただしたところ「改革をすると血液製剤の供給がストップするから」と述べていました。倫理観の欠如が甚だしく、おごりとしか言いようがありません。

 

4種混合ワクチンの安全性?

一番皆さんが不安なのは、化血研のワクチンの安全性だと思います。厚生労働省が精査したところ、4種混合ワクチンの製造方法に細かい所も含めて348か所の違いが見られました。製造過程に書かれていない抗凝固剤であるヘパリンナトリウムが添加されていたり、ワクチンの能力である力価を調べる方法が変更されていたなどの不備が見つかっています。4種混合ワクチンは他のメーカーと比較して化血研のワクチンだけに副反応が多いという結果はでていないこともあり、「品質および安全性などに重大な影響を及ぼす可能性は低い」という報告が出されています。1日でも早く「安全であること」を発表していただきたいと思います。今回の化血研の不正を知り、自分が医師としてできることは化血研のワクチンを使用しないことだと考えています。

東芝の不正会計処理、横浜市のマンションの傾きで明らかになった杭打ちデータ改ざん問題と偽装だらけでいやになりますが、偽装してもいつかは発覚し会社の存続に関わる大きな問題となります。膿を出し切り健全な会社に改めていただくことを期待します。40年前、3種混合ワクチンが一時中止したことで接種率が下がり、百日咳が流行してしまった苦い経験があります。予防接種をしないことで防げる病気にかかってしまうリスクがあることも考えていただき、今回の不正をきっかけに安易にワクチンをしないという考えにならないでほしいと願っています。

 

たばこ増税案

 2017年4月の消費税率10%への引き上げ時に軽減税率を導入するための代替財源をたばこ増税に一部充てる話がでています。禁煙の理由でたばこ代が高くなったからということをよく聞きます。先進国に比べてまだまだ安いと言われていますので、ぜひともこの機会に料金を引き上げて禁煙する人が多くなることを期待しています。

 

参考文献

第三者委員会報告書(化血研)

http://www.kaketsuken.or.jp/credibility00.html

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