令和8年10月号(Vol.257)<病児保育から拡がる子育て支援>
9月は山梨では珍しく雨の日が続きました。国内各地からの豪雨の情報を聞き県内でもと心配していたところ、先日の大雨で国母交差点近くが想像以上に冠水していて驚きました。大雨時、アンダーパスはもちろん、道路が冠水しやすい場所等、豪雨対策を検討すべきと感じました。
今月は多くの学校や園で運動会が開催されます。親にとって子どもの晴れ舞台を見ることができる貴重な機会ですが、一部の子どもたちにとっては連日の運動会の練習で疲れている場合もあります。この時期はいつも以上に子どもたちの様子を気にしてもらえるとありがたいです。
2026年9月10日こども家庭庁の専門委員会は、親が子どもを手にかけたうえで自らも命を絶つ事案について、長年使われてきた「心中」という呼び方を見直すと発表しました。新しい呼称は「保護者の自殺を伴うこどもの虐待死」です。「心中」という言葉は「この世で添い遂げられない男女が合意の上で自殺する」という意味で、自殺を図る保護者がこどもを殺害する事案に同じ言葉を使うことで誤解を招くおそれがあるための変更となります。社会全体に対して、こどもは保護者の所有物ではなく権利の主体であることを伝えています。子どもの人権を意識し、子どもを大切にする社会を築いていきたいですね。
8月中旬、札幌市で開催された外来小児科学会の中でシンポジウム「病児保育から拡がる子育て支援」で、座長兼シンポジストを務めさせていただきました。今月はこのシンポジウムについてお伝えします。
病児保育からひろがる子育て支援の輪
1人目のシンポジストは『たるいこどもクリニック幕張(千葉県千葉市)』の垂井洋樹先生です。このクリニックは2021年に開業し、小児科・病児保育室だけではなく、一時預かり託児所も併設し子育て支援を行っています。小児科の開業だけでも様々な苦労があるものの、子どもたちとその家族のためにという思いが強く実現できた施設であることを知りました。
病児保育と産後ケアの二刀流で実践する子育て支援
2人目は『大名よねくら小児科クリニック(福岡県福岡市)』の米倉順孝先生です。このクリニックは小児科・病児保育だけでなく、産後ケアも併設し、この取り組みは全国的にもほとんどありません。産後ケアは出産後1年以内の母子に対して心身のケアや育児のサポート等を行い、 産後も安心して子育てができる支援体制の確保を行う事業で、多くは産院・助産院・病院産科で行われていますが、小児科併設は珍しい形態です。看護師・助産師・保育士がチームで関わり、子どもの診察・予防接種を一緒に行うこともできるそうです。「実家に帰ってきたように」とくつろげる空間づくりをこだわっていて、情緒的な安心感が母親の心を和ませているようです。私は米倉先生と全国病児保育協議会での繋がりがあり、いつも前向きに活動している姿勢に刺激をいただいています。
自主運営で始めた病児保育から繋がった子ども子育て支援
3人目は『つむぎこどもクリニック(埼玉県越谷市)』の吉岡淑隆先生です。このクリニックは2021年開業、小児科・病児保育だけでなく、地域の支援者と共に「越谷市こども子育て楽会」という組織を作り上げ、昨秋にはこの組織で近所の高等学校を利用し、子どもが主役となるお祭りを企画したそうです。吉岡先生はよく存じていて、まだ40歳代の若さの中に秘められたパワーを持っています。医療の枠を超えての活動は通常できません。今後の飛躍が期待されます。
開業医とこども園の協働~病児保育・医ケア支援・産後ケア~
4人目として私が話をさせていただきました。妻がこども園を運営していることもあり、クリニックとこども園を同じ敷地内で行っているので、病児保育だけではなく、医療的ケア児のデイサービス・こどもの訪問診療・子育て支援センター・放課後児童クラブ・一時預かり・産後ケアセンター・相談支援事業所があり、子育て支援事業をワンストップ行えます。これらの事業を多職種でスムーズに関わることができるのは夫婦で運営している強みと言えます。
これからも「こどもファースト」で取り組んでいきたいと考えています。
シンポジストの小児科医に共通しているのは小児医療だけでなく、子育て支援に対する強い使命感を持っていました。各先生方の熱い思いを直接聞くことができて、私自身元気と勇気をもらうことができました。これからの小児科医に求められることは医療だけでなく、子どもたちの代弁者として社会活動に貢献していく必要があることが理解できたので、これからより視野を広げて尽力していきたいと思っています。













