令和7年9月号(Vol.244)<br>病児保育研究大会に参加して
今夏は異常とも言えるほど、猛暑が続いています。来月になれば暑さも和らぐので、水分をしっかり取って、エアコンを上手に利用し熱中症に気をつけてください。2学期が始まり運動会の練習も加わると、頭痛・腹痛・だるさなどの体調不良を訴えるお子さんには、学校での困り感がないか聞き、調整をしていただけるとありがたいです。
うちのクリニック隣にあるげんき夢こども園では保護者がわが子と一緒に1日園の見学をする保護者参観があります。その参観の中で、保育士と保護者らで情報交換会があり、そこに参加したある父からの話をお伝えします。園では子どもたちに防煙教育の一環で年長児に対し、たばこの害について説明をしたところ、子どもが父に「たばこには害があるので、パパやめた方がいいよ。」と真顔で言われたことが父の胸に響き、禁煙を決意したそうです。子どもたちへの教育の大切さを感じました。
わが家のブームと言えば、今まで見たことがなかったNHK朝ドラ「あんぱん」を毎晩、見ていることです。「アンパンマン」を生み出したやなせたかしと暢の夫婦の生き様を描いていて、戦中、戦後の荒波を乗り越えていく物語自体、感嘆させられます。テレビをゆっくりと見れるようになったのも、娘が中学生になり、子育てが以前より楽できるようになった証と感じました。
7月の連休に行われた「第35回全国病児保育研究大会in愛知」に、うちのスタッフと一緒に参加してきました。全国各地で精力的に行われている病児保育のスタッフからいろいろなことを学び、親睦を深めてきましたので、皆様にご報告いたします。
病児保育とは
病児保育は一般的に保育園や幼稚園に通っている子どもが病気にかかり、集団保育が不可能な場合に、その子どもを預かることを言いますが、正式には全国病児保育協議会により「病児保育とは、単に子どもが病気のときに保護者に代わって子どもの世話をすることを意味しているだけでなく、病気にかかっている子どもに、子どもにとって最も重要な発達のニーズを満たしてあげるために、 専門家集団(保育士・看護師・医師・栄養士等)によって保育と看護を行い、 子どもの健康と幸福を守るためにあらゆる世話をすることである」と定義されています。子どもが病気にかかると親は不安になります。その際経験豊富な専門家が全面的にサポートします。ご安心ください。
病児保育に携わって
15年前からうちの病児保育室をクリニックとこども園と一緒に運営しております。保育士・看護師が連携しながら保育を行い、栄養士が個別に対応しながら、小児科医である私も関わり対応しています。現在の利用人数は1日3~4人程度で病気別に部屋を分けて対応しています。利用時、場所や人に慣れないで泣いていた子どもも保育士に慣れ、楽しそうに遊んでいます。利用されたご両親から感謝の言葉を聞くと存在意義を感じます。保育士1名に対して子どもが2,3人と少数のため、利用しているお子さんの満足度は非常に高く、普段通っている園よりも病児保育室に行きたがるお子さんもいます。お子さんの急な病気で仕事を休みにくい場合は病児保育の利用を検討してみてください。
広域化シンポジウムを実施
病児保育は市町村の事業であるため、住所地にある病児保育室しか利用できません。県内どこでも利用できる広域化は利用者の声を私たち県内の施設長らで知事への要望書を提出したことがきっかけでした。2018年、県主導で山梨県内の病児保育施設はどこでも利用できるようになり、これが全国初のことでありました。現在は山梨県も含めて5都道府県にまで広域化が広がっています。
全国病児保育協議会から他の都道府県にも広げて欲しいと声がかかり、私が広域化を広げるプロジェクトリーダーに選ばれ、今回の病児保育研究大会で広域化のシンポジウムを初めて開くことになりました。このシンポジウムでは、広域化が進んでいる福岡県・大分県・鳥取県・愛知県の関係者からの話、広域化できていない地域の利用者から広域化を強く願う訴えもあり、大変有意義な会となりました。このシンポジウムの参加者も多く、関心の高さに驚かされました。
山梨県で広域化が達成できたのも県と各市町村のおかげであると感謝しております。さらに、2024年10月から利用料の1000円補助が始めり、山梨県の病児保育は他の都道府県と比べ物にならないほど利用しやすいものとなっています。
病児保育へのご理解を!
病気のときぐらいは親(特に母親)がみるべきと考えている社会の風潮はまだ残っていると思います。こうした風潮を変えていかないと、子育てしやすい世の中にならないと思います。子どもは急に熱を出し、園や学校に行けなくなると、親は仕事をどうするか困ってしまいます。職場の雰囲気が気軽に休めるようであれば、よいのですが、そういった職場はまだ少ないのが現状です。困ったら病児保育の利用を検討してください。