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院長コラム

令和5年7月号(Vol.218)
麻しんを正しく恐れよう!

2023/07/01(更新日)

 夏がやってきました。この3年間は制限の夏だったので、今夏は思いっきり遊んでください。コロナ禍だった頃、子どもたちが診察に来ると「鼻の検査する?」と泣きながらやらないでほしいと訴えてくるお子さん達に、熱がある場合はコロナの検査をしてきました。5類以降、コロナの検査をする機会が減り、子どもたちの検査の負担が減ってきてホッとしています。最近、感染対策の緩和、コロナ以外の感染症に対する免疫の低下のためか、RSウイルス・インフルエンザ・夏風邪・胃腸炎などの感染症が流行しています。

 5月末、うちの娘(小5)の運動会が保護者の人数制限なく盛大に開かれました。バトンリレー・組体操・ダンスに取り組んでおり、運動会の練習が始まったとたんテンションが上がっていました。当日は娘の姿を見て、成長を感じることができる日となりました。運動会は午前中のみの開催で午後までの開催を知る親としてはちょっぴり物足りなさを感じますが、先生方の働き方改革・子どもたちの練習の負担の両面から考えると妥当性を感じました。

 国立感染症研究所から国内の麻しん患者数が6月4日時点で14人と発表がありました。2020年10人、2021年6人、2022年6人の患者数から考えると、今年は今後の患者数の増加が懸念されます。まだ患者数が少ないのでパニックになる必要はありませんが、この機会に「麻しん」という病気を知っていただけたら幸いです。

 

麻しんとは

 麻しんは麻しんウイルスによって起こり、感染力は非常に強く、空気感染・飛沫感染・接触感染によって感染します。感染から約10日後に熱・せき・鼻水などの症状がでて、その後全身に発疹が出てきます。肺炎・中耳炎の合併症を伴うことも多く、1,000人に1人が死亡する重い病気です。特効薬はなく、確実な予防法は予防接種です。診断はインフルエンザのような迅速検査はなく、症状が熱・咳・鼻水といった風邪と同じような症状であるため、初期の診断は困難です。麻しんワクチンをしている人でもかかる場合はあり、症状が軽くなるため、

診断はさらに難しくなります。

 

麻しんにかからないために

 麻しんを予防する唯一の方法はワクチン接種です。定期接種で子どもたちは1歳台と年長で2回接種をします。まず1歳になったらすぐに接種をしてください。一番心配なのは接種対象の時期でない1歳前のお子さんです。

今年の麻しん患者の感染経路が共通の公共交通機関(新幹線などの電車)であったことが明らかにされています。麻疹ワクチンをしていない1歳前のお子さんは電車などの公共交通機関の利用を控えた方がよいのではないかと思います。さらに厚生労働省は麻しんが疑われる症状があった場合は、受診前に医療機関に連絡し、公共交通機関の利用は控えてほしいと述べています。

 大人も子どもと同じで麻しんワクチンを2回接種しているか確認してください。母子手帳をみて、わからない場合は血液検査で麻しんの抗体検査を行い、低い場合は接種をしてください。抗体検査は自費になるため、ワクチン接種していないようなら抗体検査をせず、ワクチンを2回接種しても構いません。迷うようであれば、かかりつけ医に相談をしてください。

 

麻しん感染により難病を患うことも

 麻しん感染により発症する亜急性硬化性全脳炎(SSPE)という難病があります。麻しんに感染してから数年の潜伏期間の後に発病し、発病後は数か月から数年の経過で神経症状が進行する病気です。治療法は確立されておらず、現在でも予後が悪い病気です。麻しん患者の数万人に1人が発症します。患者数は現在全国に150人程度います。以前は年間発症者数が10~15人くらいでしたが、麻しんワクチンの普及により最近の発症者はほとんどみられません。

 私はSSPEにかかったお子さんを持つ家族の会(SSPE青空の会)が行っているサマーキャンプに数年前から参加させていただいています。以前サマーキャンプで参加した時に、ご両親から聞いた話をお伝えします。「ワクチン接種対象年齢前の0歳代に麻しん感染し、その後は全く元気に普通の生活をしていましたが、楽しい高校生活を送っていた頃、足のピクつきがはじまり、やがて寝たきり生活になってしまった」「親としては発症し急激に症状が悪化しているにも関わらず、何もできずにいたことが一番つらかった」という内容でした。話を聞き、私はやりきれない気持ちでいっぱいになりました。麻しんに感染するとまれにSSPEにかかることがあります。この家族の会は、家族の交流だけではなく、SSPEという病気がなくなるために、麻しんワクチンを接種してもらうためにお子さんを連れて、学会や厚生労働省に接種を呼びかける活動をしています。

同じ思いの家族を出さないためにという活動に敬意を表します。

 

参考文献

国立感染症研究所 感染症発生動向調査2023年第22週(5月29日~6月4日)

厚生労働省 麻しんについて

SSPE青空の会

亜急性硬化性全脳炎(SSPE)(指定難病24)(難病情報センター)

 

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