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院長コラム

令和3年11月号(Vol.198) 
子どもの肥満について

2021/11/01(更新日)

 先月までの暑さがうそのように秋が深まってきました。今夏はコロナの第5波により子どもの感染者も増加し心配していましたが、その後、急速に患者数が減少、気持ちが少し和らいでいます。

9月に屋内運動施設でクラスターが発生しました。このクラスターではお子さんの陽性者もいたため、地域の学校や園、そのご家庭に影響が出ました。当院のスタッフも検査の対象ではないものの、自粛して勤務を数日休みました。1人1人が意識を高く持ち、人に広げないように、特にお子さんと接する方は体調が悪い場合はコロナに罹ってなくても、接触を控える配慮をしていただけたらと願っています。

 先月、娘が校外学習に行ってきました。数日前から、バスの隣の席の子の様子や工場見学での話を楽しみにしていました。当日の朝は気持ちが高ぶり、帰ってきてからもとても機嫌がよく、いろいろな話をしてくれました。コロナ禍で様々な行事が変更される中で、予定通りに実施してくれたことに感謝したいです。

 今夏、文部科学省は2020年度の学校保健統計調査の結果を公表しました。肥満傾向がある児童の割合が高校1年を除く全学年で前年度より上昇し、県内では8歳男子でその割合が全国最高となりました。コロナ禍で家にいることが多く、運動不足などが原因と言われています。今月は子どもの肥満についてお話しします。

 

子どもの肥満はどうやって評価する?

 大人の肥満を評価するBody Mass Index(BMI)は子どもでは成長期であるため不適切とされ、子どもは肥満度で評価します。

肥満度とは『標準体重に対して実測体重が何%上回っているかを示すもの』で、【肥満度=(実測体重―標準体重)/標準体重×100(%)】で計算されます。  幼児では肥満度15%以上:太りぎみ20%以上:やや太りすぎ30%以上:太りすぎとされ、学童では肥満度20%以上:軽度肥満30%以上:中等度肥満50%以上:高度肥満と言います。ただし、乳児の肥満は多くが様子をみてよいとされています。肥満度は日本小児内分泌学会ホームページの「肥満」の中に掲示されている「肥満度判定曲線」を利用すると、身長と体重からすぐに肥満度が調べられます。肥満の多くは明らかな病気がない原発性肥満とされていますが、まれには中枢神経系や内分泌系などの病気が原因で肥満になる二次性肥満があります。

 

肥満は心理的問題にも影響する

 肥満は特に生活習慣病と呼ばれる2型糖尿病、脂質異常症、高血圧などが原因となり、これらは動脈硬化を促進し将来的に心筋梗塞や脳卒中を起こすリスクを高めます。さらに脂肪肝や睡眠時無呼吸への移行や、膝・腰などに悪い影響を与えますので肥満の状態を長く続けていることはよいことではありません。今まで述べたような身体的な問題だけでなく、心理的な問題も指摘されており、肥満はいじめの標的になりやすいといわれています。また自己肯定感・自尊心の低下から無気力や不登校に陥る例もあります。

 

治療法は

 子どもの肥満は大人の肥満に移行しやすいことがわかっています。肥満度が高く、年齢が高いほど大人の肥満リスクが高くなっています。子どもの軽・中等度肥満の20-45%、高度肥満の約75%が大人の肥満に移行しています。このことから早い時期からの対応が大人の肥満に移行せずに済みます。子どもの時期は肥満があっても対応が遅れがちですが、将来のことを見据えて、親がお子さんのために生活習慣等気にしていただくことが大切です。

 治療の目標は体重を減らすことではなく、過剰に蓄積した内臓脂肪を減少させて、肥満に伴う合併症の数や程度を減少させることで、まずは肥満度をそれ以上増加させないことです。

具体的には朝食の摂取・野菜の摂取・薄味・間食を与えすぎない・清涼飲料水はできるだけ与えないなどの食生活だけでなく、テレビやゲームなどの時間を1日2時間以内とし外遊びをしたり、早寝早起きの生活を心がけたり、毎日の体重測定といった生活も含めて対応することが大切です。

私の体重は長らく68kg前後で推移していましたが、数か月前70kg超えてしまい、慌てました。対策として仕事帰りに楽しみにしていたコンビニでの買い食いを止め、運動も気にするようにしたところ、以前の体重に戻りました。体重測定の大切さを実感しました。

肥満の治療は毎日コツコツ、地道な対応が大切ですので、親から子どもに強制させると長続きしません。親子で一緒にできることから始めてください。さらに専門家である医療機関と一緒に治療を進めることをお勧めします。

 

参考文献

日本小児内分泌学会ホームページ http://jspe.umin.jp/public/himan.html

小児肥満症診療ガイドライン2017

幼児肥満ガイド 日本小児医療保健協議会

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