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院長コラム

令和3年9月号 (Vol.196)
RSウイルス感染症について

2021/09/01(更新日)

昨年に続き、今年の夏もコロナ感染対策を気にしながらの夏休みでしたね。我が家も家で花火をしたり、プールに行ったり、控えめな夏を過ごしました。

今まで以上に患者数が増加している第5波での感染が気になりますが、親としては子どもに笑顔で対応できるように、ご自身の心のケアにも気遣ってください。今月は予定していたコロナワクチンについてではなく、夏前から県内でも大流行しているRSウイルス感染症について変更してお話します。RSウイルス感染症は秋から冬に流行しピークが12月から1月になることが例年の流行状況でした。昨年はコロナの影響でほとんど発生がなかったためか、県内では今年5月から患者数が増えており、7月にピークを越えた状況にあります。しかし現在(2021年8月)も当院における診療で多く見られています。

 

RSウイルス感染症って?

 咳・鼻水・熱が主な症状で、風邪と同じような症状ですが、風邪よりも咳がひどくゼイゼイして、熱が4~5日続くこともあります。2~3歳以上のお子さんは大抵症状が軽く済むのですが、0~1歳のお子さんは重症化しやすく、気管支炎・肺炎・細気管支炎になり入院することもあります。症状がおさまるまでに2週間近く続きます。潜伏期間は2~8日、主な感染経路は飛沫感染・接触感染です。

 1歳までに半数以上、2歳までにほぼ100%かかります。1度かかれば、2度とかからない病気ではなく、繰り返し感染します。ただ、回数が増えるほど症状は軽くなります。大人も罹り、かぜの症状と変わらないため区別できないのが実態です。

 予防は飛沫や接触によって感染するため、コロナの予防と同じで手洗い・うがいをしっかりしてください。低出生体重児・心臓や肺に基礎疾患を持つ子どもたちは「シナジス」という抗体(抗RSVモノクローナル抗体)を注射して重症化を防いでいます。

 

診断と治療について

 診断は迅速検査でわかりますが、年齢が上がると症状が軽くなり、熱も出ないと感度も悪いため検査で陰性になる場合もあり、迅速検査の限界もあります。流行期は風邪との見分けが難しいこともあるため、咳・鼻水・熱といった風邪様症状があるときはRSウイルス感染症を疑う必要があります。コロナ禍においては診断がつくことでコロナ感染でないこともわかり安心できるメリットがあります。積極的に迅速検査をしてもらうことができないと不安を抱いている方がいると思います。その理由は診療報酬の体系が迅速検査をしても診療報酬(外来時)に認められていないことが挙げられます。結果として迅速検査をしても診療報酬として認めてもらえず、検査の試薬代が医療機関側の負担になってしまっています。このような背景から園では検査をお願いしたいが医療機関では消極的になり、その間の立場にあるご両親が困惑する現状があります。こういったことを解消するには診療報酬を改訂し、診療報酬に迅速検査を認める環境を整えていくことも必要ではないかと感じています。

治療は特効薬がなく、抗生剤も効きません。但し、細菌感染の合併があるときは抗生剤を使用することもあります。通常は気管支拡張剤・去痰剤・吸入療法などの対処療法を行います。咳がひどくなる・飲みが悪いなどの症状があった場合は早めの受診をお勧めします。特に生後1~2か月のお子さんは悪化すると無呼吸や突然死につながることもあります。

 

0・1歳児を守るために園がすべきこと

 0・1歳児がいるご家庭では、RSウイルス感染症流行期は咳・鼻水などの風邪様症状がある方との接触は控えた方がよいです。合わせて家族でこのような症状がある場合はRSかもと疑い対応することをお勧めします。

園は役割として一人一人のお子さんの健康と安全を確保するだけでなく、集団全体の健康と安全を確保し、流行を最小限に留めるようにガイドラインに示されています。流行期は咳・鼻水のあるお子さんはRSを疑い、再度保護者に理解を求め、感染が収まるまで通園を控えること、保育士さんも感染源になるので同様の症状があれば休むことも必要です。登園の目安は「呼吸器症状が消失し、全身状態がよいこと」であって、咳・鼻水が収まっていない場合は感染を広げる可能性があります。

 

今後の課題

 RSウイルス感染症は保険診療の体系として医療機関が迅速検査をしやすい環境整備、予防としてのワクチン、さらに治療薬としての抗RSウイルス薬の開発ができれば、もっと子どもたちが苦しまずに生活ができるようになります。今後の研究に期待したいです。

 

参考文献

小児RSウイルス呼吸器感染症診療ガイドライン2021

保育所における感染症対策ガイドライン2018年改訂版

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