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院長コラム

令和3年2月号(Vol.189)
「もみじの家」の活動を知って

2021/02/01(更新日)

 今年は例年と違う静かな年末年始を過ごしたのではないでしょうか。我が家は密を避けながら初詣に行き、私が引いたおみくじがなんと大吉でした。コロナ禍での暗い気持ちを吹き飛ばす結果となり、前向きな一年になりそうな感じがしました。コロナ禍で子どもたちもいろいろと制約を受け、楽しみにしている修学旅行や成人式などの行事が中止となり、何もできないストレスが積み重なっていることが大変気になります。大人も子どもも息抜きをしながら日々の生活を送っていきましょう。

 1月16・17日に全国病児保育協議会が主催する研究大会が行われました。緊急事態宣言下のため、WEBのみで開催され、私は当院の看護師・保育士のスタッフと一緒に自分のクリニック内で画面を通して聴講しました。WEB開催は開催地へ出向く手間がないメリットはありますが、画面を通してのみだと、場の雰囲気や同じ病児保育に従事している全国の仲間と会う機会が失われ、寂しく感じました。その研究大会の講演で国立成育医療センター「もみじの家」ハウスマネージャーの内多勝康様(元NHKアナウンサー)による「医療的ケアがあっても安心して暮らしたい」という講演がありました。今月は皆様にその内容をお届けします。

 

「もみじの家」って

 2016年春、全国の子ども病院の中心的な存在である国立成育医療センター(東京)の敷地内に在宅で医療的ケアを受けている子ども(医療的ケア児)と家族を支える短期入所施設「もみじの家」が開設されました。「重い病気を持つ子どもと家族のひとり一人がその人らしく生きることができる社会を創る」という理念を掲げています。親子でもお子さんだけでも宿泊ができ、24時間看護師が親に代わって経管栄養の注入や痰を吸引するなどの医療的ケアを担当することで、その家族(特に母親)の疲弊を軽減し家族の休息(レスパイト)を提供しています。もみじの家での生活は保育士さんが日中活動(遊びや学びの)を行います。利用者である両親からのアンケート調査から利用したお子さんのQOLが向上し、遊び・学びが大切であることが報告されています。医療的ケアだけでなく、遊び・学びも加えることでお子さんやご両親の満足度が高く、希望をお断りするような状態だそうです。

 一方で課題は運営が安定せず、赤字が年間2000万円以上あることで、赤字分は寄付金で賄っているそうです。こういった施設が増えていくためには収支が均衡になるような支援体制が必要だと述べていました。
 

医療的ケア児を持つ家庭の姿

 就学前の医療的ケア児は医療的ケアに対応できないことを理由に保育園や幼稚園に通うことができず、友達ができないことから家族が孤立しがちになります。学童期では地域の学校へ通えなかったり、通学には親の同伴が必要になったりします。卒業後は家以外の居場所がなく、親亡き後の生活がとても不安になります。親の悩みとしては医療的ケアが24時間365日続くため、睡眠時間も少なく、疲労が蓄積され、就労ができない状況が起こります。残された兄弟姉妹は学校行事への親の参加が制限され、病気の子どもが優先されるため、我慢することが多くなる家族の実情があると話していました。そのため「もみじの家」のような施設が都道府県に1か所ずつ設置されることを望んでいました。

 

山梨県内の状況は

 5年前に当クリニックで医療的ケア児を対象とした預かり施設「スマイル」を開設しました。「もみじの家」が行っている宿泊まで対応できていませんが、日中のみの預かりを通じて、微力ではありますがそのお子さんやご家庭に関わっています。その家族からも同様の大変さを聞いています。また、うちのスマイルも「もみじの家」同様に赤字体質になっており、継続の難しさを感じています。その後、山梨県内においては国中地域では日中のみですがさらに2施設増えました。宿泊できる施設は県内では一部の病院でしか行われておらず、郡内地域は日中・宿泊可能な施設が共にないため、そのような施設が増えることを望んでいます。施設を運営する上で赤字体質が見込まれるため、運営施設への公的な補填や公的な施設の開設が期待されます。

 医療的ケア児に関わる生活環境が現在、あまりにも貧弱であることが否めません。家族の努力で解決できる次元を超えており、社会で支えるべき課題となっています。医療的ケア児とその家族は社会から孤立しがちで、対象者も少ないことから大きな声になりづらいものとなっています。障害の有無に関わらずどんな子どもでも安心して子育てできる環境が充実されることを医療的ケア児とその家族の代弁者として皆様にお伝えしたいと思います。

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