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院長コラム

平成25年10月号(Vol.102)
すべての子どもたちにB型肝炎ワクチンを!

2013/10/01(更新日)

猛暑続きの夏がようやく終わり、空気も澄んで秋らしく過ごしやすくなってきました。2020年オリンピック・パラリンピックが東京で開催が決まりました。あと7年後、皆さんはいくつになっていますか?今から楽しみですね。

 現在、定期接種化への候補とされるワクチンが3つあります。水痘・おたふくかぜ・B型肝炎ワクチンです。今月はその中でもあまり知られていない「B型肝炎ワクチン」についてお話します。

 

B型肝炎について

日本でのB型肝炎ウイルスの感染者は約100万人(約100人に1人)と推定されています。ウイルスが体に入ると肝炎が起こることもありますが、自覚症状がないことも多く、偶然行った血液検査で初めて感染に気付くこともあります。3歳以下の子どもが感染すると、キャリア(ウイルスを体内に保有した状態)になりやすく、キャリアになると約10%が慢性肝炎になると言われています。慢性肝炎になると将来、肝硬変や肝がんに進行することもあるため、低年齢での感染予防は重要です。また、B型肝炎ウイルスに感染すると急性肝炎から劇症肝炎を起こし死に至ることや、抗がん剤治療で免疫力が低下することで重症の肝炎が起きることもあります。
 B型肝炎ウイルスは数種類のタイプがあり、日本において流行していた遺伝子型Cは慢性化することが少ないタイプだったため、問題になっていませんでした。しかし、最近慢性化しやすい遺伝子型Aというタイプが広がってきたため、慢性肝炎→肝硬変→肝がんへと進行することが心配されています。

感染すると、キャリア化し将来の慢性肝炎→肝硬変→肝がんへの進行・長期にわたり新たな感染源になるという点で問題になります。

 

感染経路は血液や性交渉だけではない

B型肝炎ウイルスは、血液だけではなく、唾液や汗、涙などにも含まれています。母子感染だけではなく、乳児期に父などからの感染や大人になってからの性交渉からの感染(水平感染)も考えられ、さらに感染経路がわからない場合もあります。保育園や学校の部活動を通じての集団感染事例も報告されています。

 

すべての子にB型肝炎ワクチンを!

日本のB型肝炎対策は、1986年、キャリアの母親からの感染(垂直感染)予防から始まり、母子感染は減ってきました。しかし、予防スケジュールがしっかりと行われなかったり、水平感染もあることから、この対策だけではB型肝炎を制圧できない状態が現在も続いています。

B型肝炎は母子感染や水平感染だけではなく、気付かない間にかかることも多いので、WHO(世界保健機関)では、世界中の子どもたちに対して生まれたらすぐに国の定期接種として接種するように指示しています。WHO加盟国95%以上の国々ではWHOの指示通りに定期接種になっていて、B型肝炎の患者さんが激減しました。日本でも早く定期接種になることを願っています。

現在、B型肝炎ワクチンは任意接種で多くの医療機関で接種できますのでこれを機にぜひ接種していただきたいと思います。このワクチンはキャリア化を防ぎ、将来、肝がんから赤ちゃんの命を守る「がん予防ワクチン」です。生後2カ月から行うヒブ・肺炎球菌・ロタウイルスワクチンと同時接種ができます。赤ちゃんだけでなくても、幼児・学童のお子さんや身近にB型肝炎の患者さんがおられる場合などは大人でも接種をお勧めします。接種時期と回数は4週間隔で2回、さらに20~24週経ってから1回、合計3回となります。効果は20年以上続くと言われています。接種年齢は早いほど抗体上昇がよく、早い時期での接種をお勧めします。

 

赤ちゃんパワー

うちの1歳の子とバスや電車に乗り席に座っていると隣の人の多くがニコニコ微笑み声をかけてくれます。大人通しではありえないことですが、赤ちゃんには家族だけでなく、周囲の人までも和ませる力を持っています。高齢化社会で子どもが少なくなる時代に入って子どもが貴重な存在になります。今まで以上にもっと子どもたちを大切する社会になってもらいたいです。

 

参考文献

B型肝炎ワクチンに関するファクトシート  国立感染症研究所(平成22年7月7日版)

http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r9852000000bx23-att/2r9852000000bxqf.pdf

B型肝炎ワクチン作業チーム報告書

http://www.mhlw.go.jp/stf/shingi/2r98520000014wdd-att/2r98520000016rr1.pdf

VPDを知って、子どもを守ろう。http://www.know-vpd.jp/

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