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院長コラム

平成28年4月号(Vol.131)
母乳バンク

2016/04/01(更新日)

暖かくなってきて、ようやく春がやってきました。皆さんの新生活は順調ですか?ペースがつかめないかもしれませんが、ゆっくり調整していきましょう。先月は「保育園落ちた日本死ね!」が大きな話題になり、反響は大きく安倍総理大臣の耳まで届きました。県内では都会までの深刻さはありませんが、希望する園に入れなかったり、年齢によっては断られるケースも耳にします。保育園待機児童の解決策は保育園(もしくは園児の受け入れ人数)を増やすしかありません。共働きが当たり前の時代、子どもの数だけ保育園を用意してもらえれば問題がなくなります。小学校に入るときは枠があり全員入学できます。学校と同じように保育園入園を希望する人には全員入れるようにしてもらいたいです。そうすれば、働きたいと希望する母が働くことができ税金を払うこともできます。園児の受け入れ人数をもっともっと増やすことが今、緊急に求められています。合わせて深刻な保育士不足の解消のためにも、保育士の待遇改善が急務となっています。保育士がいなければ園児の受け入れは増やすことができません。保育士という仕事の重要性を国全体で改めて認識すべき時期にきていると感じています。

 今月は昨秋、母乳研究の第一人者である昭和大学小児科水野克己先生の講演を聞いてきましたのでみなさんにお伝えします。

 

母乳バンクって?

 日本の新生児死亡率は世界で一番低く、トップレベルの医療体制が整備されています。早産のお子さんが生まれてすぐに母乳を飲んでもらうことで病気の予防ができます。母乳には粉ミルクに入っていない免疫(病気を守る)が入っていて、特に初めての母乳(初乳)には栄養や免疫がたっぷり入っています。その母乳をどんなお子さんにも恩恵が受けられるように届けるためにどうしたらよいのか欧米などの取り組みを参考に考えられてきました。

特に早産児は体重が少ないため、正常児と比べて予備能力がありません。出生後間もない時期に早産児がかかると恐い病気に「壊死性腸炎」という病気があります。これは腸への血液の流れが障害され、細菌感染をおこし腸が壊死する病気です。この病気を予防するために出生後早期に母乳を与えるとよいことがわかっています。壊死性腸炎の予防だけでなく、点滴期間の減少・長期的には生活習慣病の減少・認定能力の上昇にも寄与します。対象者は早産児以外に腹部手術後、ミルクアレルギーなどにも有用です。母親が病気で母乳を与えられなかったり、充分に母乳がでなかったりする時、善意で提供された母乳を殺菌処理して保存した後、必要とする赤ちゃんに提供するシステムが「母乳バンク」です。

 

母乳バンクのしくみ

 日本の母乳バンクは昭和大学江東豊洲病院で行われています。提供者はまず担当医から母乳バンクの説明を受けます。輸血歴がない・ピアスをしていない・たばこを使用していない等を確認し、血液検査を受け感染症がないことを確かめます。母乳提供で金銭をもらうと、人工乳を入れたり水で薄めたりすることが考慮されるため、提供者はボランティアで行なわれています。提供された母乳は院内で低温殺菌処理後、冷凍保存し細菌検査が行われます。このようなしくみで提供された母乳は感染や細菌から守られています。

 

インターネットでの母乳売買に注意!

 昨夏、インターネットで母乳を売買しているという報道がありました。第三者の母乳は持病や保管方法などがわからず、母乳だけではない粉ミルクや化学物質などが混入がみられたりしました。また細菌の混入から繁殖の可能性、さらにHIV(ヒト免疫不全ウイルス)、HTLV-1(ヒトT細胞白血病ウイルス1型)のウイルスが入り込むと病気が発症する可能性もあります。絶対に購入しないでください。

 

全国に広げよう!

アメリカでは100年前に母乳バンクは誕生しており、欧米を中心に世界各地で運用されています。世界の周産期医療において母乳の大切さが強調され母乳バンクの必要性が高まっています。日本ではようやく3年前から始まりましたが、現在、1か所のみの実施にすぎません。厚生労働省研究班が2年前、全国の新生児集中治療室の医師に行った調査によると、7割以上で母乳バンクが必要であると回答しています。オーストラリアでは最近母乳バンクが誕生し壊死性腸炎の発症が減っているデーターが出ています。皆さんに知っていただくことで、全国に普及することを願っています。

 

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