令和7年5月号(Vol.240)<br>百日咳の流行に備えよう!
桜も散り、緑が溢れる季節になりました。皆様、新生活に慣れましたか?
うちの娘は先月、中学生となりました。ランドセルを背負っていた小学生とは変わり制服姿をみると、大人への階段を一歩ずつ上っているなと感じています。園・学校ではクラス替え、担任の先生が変わり、お子さんたちは環境が変わって疲れも溜まっていることでしょう。ご自宅では数分でもいいので「今日、学校どうだったの?」と声かけをお願いします。
3月20日、サッカー日本代表の試合を初めて応援に行ってきました。この試合でバーレーンに2-0で勝ち、ワールドカップ本大会出場を決めました。学生時代サッカー部だったこともあり、昔を回顧しながら、最高峰の試合を観ることができ、感無量でした。
TBS系日曜劇場「御上先生」の放送が3月終了しました。日本教育に蔓延する腐った権力へ立ち向かう大逆転教育再生ストーリーで、クラス担任である御上先生が生徒と一緒に信頼関係を築き権力と戦う姿は、フィクションではありますが、気持ちがすっきりしました。実際の教育現場では、公立教員の処遇改善や公立中学校の部活の外部委託など、教員の働き方を改善する取り組みは始まっていますが、教師の成り手が少ないのが現状です。高校無授業料無償化が決まりそうで家庭の経済事情にとっては歓迎できますが、教師自身の働き方改革も今以上に進めて、先生方の環境をよくすることで、子どもたちがよりよい教育を受けて欲しいと願うばかりです。
昨今、全国的に百日咳感染者数の報告が増加しており、既に昨年を超える報告数となっています。県内の百日咳の感染者数もコロナ禍で患者数が年0人、令和6年8人と増加、今年に入って、4月17日時点で15人と昨年を超えています。今月は今後さらなる患者数の増加が懸念される百日咳についてお伝えします。
百日咳とは
百日咳は百日咳菌が原因で、その名の通り百日ぐらい咳が長引くのが特徴で、特有のけいれん性の咳発作が起こります。母親からの免疫が充分でなく、乳幼児早期からかかる可能性があり、特にワクチン未接種の乳児がかかると重症化し死に至ることもあります。
症状は
経過は大きく3つに分けられ、1)カタル期(約2週間):通常7~10日間程度の潜伏期を経て、普通のかぜ症状で始まり、次第に咳の回数が増えて程度も激しく続きます。2)痙咳期(約2~3週間):次第に特徴あるけいれん性の咳があります。これは「コン、コン、コン、ヒュー」みたいな感じで吐きそうなくらい強い咳を繰り返します。嘔吐を伴うことがあり、発熱はあまり出ません。3)回復期(2,3週~):激しい咳は次第に減り、2~3週間で認められなくなりますが、その後も忘れた頃に発作性の咳がでます。全経過は約2~3か月で回復します。成人の百日咳では咳が長期に続きますが、典型的な発作性の咳がないため、診断が見逃される場合があります。これからは長引く咳があった場合、百日咳を疑うことが大切です。
診断は
診断は菌培養・血液検査・遺伝子検査があります。菌培養が非常に適しているが、保菌量が多い乳児が検査をしても菌分離成功率は60%以下と低く、ワクチン既接種者や菌量の低い青年・成人では菌分離が困難で、カタル期後半が採取ベストな時期ですが、痙咳期になると菌がなくなってしまっており、実際は検査がしづらいのが現状です。このため、遺伝子検査もしくは血液検査による抗体価を測定し診断をすることになります。
治療と予防は
治療はマクロライド系抗菌薬と咳止め・去痰剤・気管支拡張剤などが使用されます。感染経路は飛沫・接触感染であるため、通常の手洗い・うがいなどの感染対策をしてください。ただ、百日咳は感染力が強い病気で、ワクチン接種による予防が最も効果があります。
予防は百日咳ワクチンを接種することが大切です。百日咳ワクチンは0歳代に3回、1歳を超えて1回の追加接種を計4回接種しますが、それ以降は設定がありません。百日咳ワクチンの免疫持続期間は4~12年とされ、抗体が減少してくる幼児期から学童期に感染の増加がみられます。任意接種となりますが、就学前に3種混合ワクチンと11~12歳に行われる2種混合ワクチン(定期接種)の代わりに百日咳ワクチンを含む3種混合ワクチンを日本小児科学会では推奨しています。さらにこれらの任意接種を定期接種化されることを望んでいます。
生後2か月未満では百日咳に対する免疫がないので、生後2か月になったら百日咳ワクチンが含まれている5種混合ワクチンを早めに接種しましょう。
参考文献
JIHS感染症情報提供サイト 百日咳
https://id-info.jihs.go.jp/diseases/ha/pertussis/010/pertussis.html
日本小児科学会.百日咳患者数の増加およびマクロライド耐性株の分離頻度増加について
https://www.jpeds.or.jp/uploads/files/20250402_hyakunitizeki1.pdf
百日せきワクチンファクトシート
やまなし感染症ポータルサイト
https://www.pref.yamanashi.jp/kansensho/hyakunichizeki.html