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院長コラム

アトピー性皮膚炎

小児科医から最新の医療情報と県内の子どもにまつわる情報をお伝えしております。
この内容は、県内子育て情報誌「ちびっこぷれす」の「午後10時、クリニックにて…〜おほしさまの先生からの子育て応援”談”!〜」に掲載されています。

夏本番となりましたね。夏は高温多湿のため細菌が増殖しやすく、あせもやとびひなどの皮膚の病気が多くなります。汗をかいたら、シャワーを浴びるように心がけましょう。

 先月に引き続いて、今月もアトピー性皮膚炎についてお話します。今月は治療についてです。20年前は顔が真っ赤で浸出液が見られるアトピー性皮膚炎の患者さんがたくさんいましたが、最近は治療の進歩によりこのような方が減ってきました。アトピー性皮膚炎は難病ではありません。「標準治療」をすることで、うまくコントロールできる病気であることを理解していただけたら幸いです。

 

「標準治療」って?

標準治療とはアトピー性皮膚炎の専門医により効果があると認められ、多くのアトピー性皮膚炎の人が良くなっている科学的に根拠のある治療法のことです。この標準治療を理解することで、保険で認められていない薬・健康食品・入浴剤などの購入を勧めるいわゆる「アトピービジネス」の誘惑に引き込まれることなく、しっかりと治療に専念できます。

 

スキンケアのコツ

アトピー性皮膚炎の方は皮膚が乾燥状態にある「ドライスキン」になっています。ドライスキンの状態では、汗・食べかす・ほこりなどの刺激物が容易に皮膚の中へ入りやすく、炎症をおこしやすくなります。車にワックスを塗るように、皮膚を刺激物から守るために保湿剤を使用してください。シャワーや入浴時は、ゴシゴシこすらず、石鹸をしっかりと泡立てやさしく洗い、石鹸のカスが残らないように洗い流して下さい。高い温度のお湯だと体が熱くなり入浴後かゆみが強くなりますので、今の時期はぬるま湯で対応するといいでしょう。保湿剤は入浴後、服を着る前に皮膚の潤いがあるうちに使用しましょう。

 

薬物治療をしっかり理解しよう~ステロイド軟膏を怖がらないために~

 治療の中心は「保湿剤」・「ステロイド軟膏」・「抗ヒスタミン薬・抗アレルギー薬」の3つを症状に応じて使い分けます。10年前にタクロリムス軟膏(商品名:プロトピック軟膏)という免疫抑制作用を持つ軟膏が登場し、ステロイド軟膏とうまく組み合わせることにより、よりよい状態を保つことができるようになっています。

 「ステロイドは大丈夫?」と思ってしまう人もいるはずです。ステロイドの内服薬は全身の副作用に注意しながら使用しますが、アトピー性皮膚炎で使用するステロイド軟膏は皮膚患部に直接作用するため、皮膚から吸収されても血中に入る量はきわめて少ないため、通常の使用量では全身性の副作用は発現しません。ステロイド軟膏は発売されてから50年以上たっています。ステロイド軟膏の副作用には塗った部分が「薄くなる」「毛がふえる」「毛細血管が拡張する」「赤くなる」などがありますが、正しく使えば大変有効なお薬です。「ステロイド軟膏を塗ると肌が黒くなる」と言った誤解あります。ステロイドは皮膚の色素産生を抑えるため、肌の色はむしろ白くなり、軟膏の副作用で肌が黒くなることはありません。ストロイド軟膏を使用せず炎症が強くなり、目の周囲の皮膚を掻く・たたくなどの状況が続くことで、白内障や網膜剥離などの目の合併症がみられることもあるので注意が必要です。

ステロイド軟膏を塗ってもよくならない時に、塗る量が少ない場合が多くあります。ガイドラインが推奨している塗る量の目安として使われている「FTU(finger-tip unit)」をご存知ですか?人差し指の先から第一関節まで押し出した量が手のひら2枚分程度の広さを塗る量だと言われています。塗る量も確認してください。

アトピー性皮膚炎は難病ではありません。ステロイド軟膏を中心とした「標準治療」をしていけばよくなる病気です。この病気とうまく付き合っていくことで、日常生活に支障がない状態にもっていくことは可能です。ステロイドを怖がらずしっかりと病気と向き合っていけば前向きな生活を送ることができます。

 

参考文献

アトピー性皮膚炎 診療ガイドライン2009(日本アレルギー学会作成)

患者だからわかるアトピー性皮膚炎(小学館)

暑い夏がやってきました。海や山へと楽しい計画を立てる方も多いと思いますが、くれぐれも水の事故には注意して下さいね。

 さて、全国に先駆けて山梨県全市町村で子宮頸がんワクチンの全額助成が制度化されました。うれしい限りです。対象者は小6・中3の女子です。対象者の方は必ず接種しましょう。ワクチンだけでなく、20歳以上の女性の方は子宮がん検診も大切ですので、忘れずに受診して下さい。

また、今月11日の参議院選挙が決まりました。先月は首相がまた変わり、「また?」と驚きました。政治に関心を持ち、みなさんの一票をしっかりと国政に反映することがよりよい社会にする一歩です。仕事や子育てで忙しいと思いますが、子どもを連れて投票所に行き、子どもに選挙の話をしてください。

今月は5月に行われた日本アレルギー学会に参加して学んだ「アトピー性皮膚炎」についてお話します。

 

Q1. アトピー性皮膚炎ってどんな病気?

アトピー性皮膚炎は「増悪・寛解を繰り返す、掻痒のある湿疹を主病変とする疾患であり、患者の多くはアトピー素因を持つ」とガイドラインには書かれています。つまり、かゆみを伴う発疹がよくなったり悪くなったりを繰り返す病気で、主に顔・首・ひじの内側・ひざの裏側などにできます。本人や家族の多くは喘息、アレルギー性鼻炎、じんましんなどのアレルギーの病気を持っています。

アトピー性皮膚炎の発症率は、平成18~20年度厚生労働科学研究によると生後4ヶ月で16.2%でした。多くは乳幼児・小児期に発症し、年齢とともに減り、一部の人は大人まで症状が続くと言われています。先ほどの研究の中で生後4ヶ月にアトピー性皮膚炎を発症したお子さんの70%が1歳6ヶ月には治ったという興味深いデーターがでました。生後2~3ヶ月でアトピー性皮膚炎にかかっても多くは1歳過ぎに治るということです。

 

Q2. 診断法

 アトピー性皮膚炎は血液検査だけで診断できるものではありません。かゆみを伴う発疹が顔・首・ひじの内側・ひざの裏側などに繰り返しでき、乳児では2ヶ月以上、1歳以上では6ヶ月以上続いた場合に診断されます。特異的IgE抗体価といった血液検査は絶対的な検査、つまり陽性=アトピー性皮膚炎であるとは言えません。この検査結果は参考程度と考えてください。この誤解は日頃診療していてしばしば経験します。

 さらに、乳児湿疹とアトピー性皮膚炎との違いについてもよく質問されます。乳児湿疹は乳児期におこる湿疹を言い、乳児湿疹の中にアトピー性皮膚炎や乳児脂漏性皮膚炎などの病気が含まれると考えてください。

 

Q3. アトピー性皮膚炎と食物アレルギーとの関係は?

 アトピー性皮膚炎と食物アレルギーは、どちらもアレルギーという病気に含まれますが、2つの病気は別々と考えてください。両方の病気にかかってしまい、合併していることもあります。

アトピー性皮膚炎になると、子どもの食事をどうしたらよいか心配になりますが、アトピー性皮膚炎の原因は食物だけでなく、ダニ・ほこり・ペット・汗・乾燥などのさまざまな原因が絡み合っています。乳児期では離乳食をどう進めたらよいか心配になりますが、普通のお子さんと同じように離乳食を始めて構いません。卵などを食べて皮膚の悪化がみられるようであれば、かかりつけ医と食物制限が必要か相談をしてください。くれぐれも素人判断での食物制限はやめてください。過度の食事制限でお子さんの成長などに問題がでることがありますし、食事制限を続けることは家族に大きなストレスがかかります。

親がアトピー性皮膚炎だと、子どもが発症しないか不安になるのは当然のことだと思います。現在のところ残念ながら予防法はなく、妊娠中や授乳の時に母親が卵などを制限することでの予防効果はありません。

 

来月は「アトピー性皮膚炎の標準治療」についてお話します。

 

参考文献

アトピー性皮膚炎 診療ガイドライン2009(日本アレルギー学会作成)


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