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院長コラム

平成22年8月号(Vol.64)
アトピー性皮膚炎の標準治療について

2010/08/01(更新日)

夏本番となりましたね。夏は高温多湿のため細菌が増殖しやすく、あせもやとびひなどの皮膚の病気が多くなります。汗をかいたら、シャワーを浴びるように心がけましょう。

 先月に引き続いて、今月もアトピー性皮膚炎についてお話します。今月は治療についてです。20年前は顔が真っ赤で浸出液が見られるアトピー性皮膚炎の患者さんがたくさんいましたが、最近は治療の進歩によりこのような方が減ってきました。アトピー性皮膚炎は難病ではありません。「標準治療」をすることで、うまくコントロールできる病気であることを理解していただけたら幸いです。

 

「標準治療」って?

標準治療とはアトピー性皮膚炎の専門医により効果があると認められ、多くのアトピー性皮膚炎の人が良くなっている科学的に根拠のある治療法のことです。この標準治療を理解することで、保険で認められていない薬・健康食品・入浴剤などの購入を勧めるいわゆる「アトピービジネス」の誘惑に引き込まれることなく、しっかりと治療に専念できます。

 

スキンケアのコツ

アトピー性皮膚炎の方は皮膚が乾燥状態にある「ドライスキン」になっています。ドライスキンの状態では、汗・食べかす・ほこりなどの刺激物が容易に皮膚の中へ入りやすく、炎症をおこしやすくなります。車にワックスを塗るように、皮膚を刺激物から守るために保湿剤を使用してください。シャワーや入浴時は、ゴシゴシこすらず、石鹸をしっかりと泡立てやさしく洗い、石鹸のカスが残らないように洗い流して下さい。高い温度のお湯だと体が熱くなり入浴後かゆみが強くなりますので、今の時期はぬるま湯で対応するといいでしょう。保湿剤は入浴後、服を着る前に皮膚の潤いがあるうちに使用しましょう。

 

薬物治療をしっかり理解しよう~ステロイド軟膏を怖がらないために~

 治療の中心は「保湿剤」・「ステロイド軟膏」・「抗ヒスタミン薬・抗アレルギー薬」の3つを症状に応じて使い分けます。10年前にタクロリムス軟膏(商品名:プロトピック軟膏)という免疫抑制作用を持つ軟膏が登場し、ステロイド軟膏とうまく組み合わせることにより、よりよい状態を保つことができるようになっています。

 「ステロイドは大丈夫?」と思ってしまう人もいるはずです。ステロイドの内服薬は全身の副作用に注意しながら使用しますが、アトピー性皮膚炎で使用するステロイド軟膏は皮膚患部に直接作用するため、皮膚から吸収されても血中に入る量はきわめて少ないため、通常の使用量では全身性の副作用は発現しません。ステロイド軟膏は発売されてから50年以上たっています。ステロイド軟膏の副作用には塗った部分が「薄くなる」「毛がふえる」「毛細血管が拡張する」「赤くなる」などがありますが、正しく使えば大変有効なお薬です。「ステロイド軟膏を塗ると肌が黒くなる」と言った誤解あります。ステロイドは皮膚の色素産生を抑えるため、肌の色はむしろ白くなり、軟膏の副作用で肌が黒くなることはありません。ストロイド軟膏を使用せず炎症が強くなり、目の周囲の皮膚を掻く・たたくなどの状況が続くことで、白内障や網膜剥離などの目の合併症がみられることもあるので注意が必要です。

ステロイド軟膏を塗ってもよくならない時に、塗る量が少ない場合が多くあります。ガイドラインが推奨している塗る量の目安として使われている「FTU(finger-tip unit)」をご存知ですか?人差し指の先から第一関節まで押し出した量が手のひら2枚分程度の広さを塗る量だと言われています。塗る量も確認してください。

アトピー性皮膚炎は難病ではありません。ステロイド軟膏を中心とした「標準治療」をしていけばよくなる病気です。この病気とうまく付き合っていくことで、日常生活に支障がない状態にもっていくことは可能です。ステロイドを怖がらずしっかりと病気と向き合っていけば前向きな生活を送ることができます。

 

参考文献

アトピー性皮膚炎 診療ガイドライン2009(日本アレルギー学会作成)

患者だからわかるアトピー性皮膚炎(小学館)

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